営業は事業の要?それとも外注すべき?営業の役割とは

published公開日:2017.09.13
営業という言葉は様々な場面で使われ馴染み深いだけでなく、営業はビジネスにとって欠かすことのできない機能です。一方で、スタートアップ企業など営業部門を持たない企業も出てきており、同時に営業代行という市場も伸長しています。今回のコラムでは、企業活動における営業の役割について考えてみたいと思います。

変わる営業スタイル、広がる営業代行

「同期でトップの営業成績」「当社の営業時間は平日9:00-17:00です」「営業電話はお断りします」...など、様々な場面で使われる「営業」という言葉。辞書には「営利を目的とした事業をいとなむこと。また、そのいとなみ」(大辞林)とあります。つまり、広義で捉えれば「営業とは事業運営そのものである」とも言えます。
一方で、「営業代行」という市場が2009年から2015年の6年で15%伸長しています※1。「事業運営を代行する」となるともはや代行業とは呼べないので、ここでの「営業」は狭義に「売り込み」や「販売促進」を指し、これを代行する事業者ということになります。営業代行が伸びている背景には、インターネットの普及によって営業に代わる「売る仕組み」ができたことが営業専任の社員を置く必要がなくなったことや強いメンタルがないと続かないこと、セキュリティ強化で飛び込み営業が難しくなったことなど、従来の営業手法が機能しないこと、また採用難など多くの理由が挙げられます。

狭義の営業とはいえ、営業のカバーする範囲は広く、代行を請け負う事業者もクライアントのニーズに応じて提供するサービスを揃えています。代行においては新規顧客の開拓を主な目的としますが、「見込み顧客とのアポイント」や「セミナーへの集客」、「Webサイトへの集客~受注」、「電話での受注獲得」など、目標とする成果は様々です。また、営業戦略を確立するためのテストマーケティングやコンサルティングなどを請け負う事業者もあります。

※1 経済産業省「ビジネス支援サービスの質の認証制度の創設に向けた評価基準の策定等に係る基礎調査」中の資料「BPO市場の実態と展望」(矢野経済研究所、2012)より

営業代行を利用するメリットとは

営業代行を利用するメリットは、営業のプロフェッショナルとしての「質とスピード」を買うことができる点、および営業行為に必要な人件費を固定費(社員の給料)ではなく変動費として扱うことができる点です。技術や開発を強みとするスタートアップ企業などの場合、社内に優秀な営業部隊を創り上げるだけのキャパシティがありません。そこで製品開発以外の業務をすべてノンコア業務として位置づけ、BPO(Business Process Outsourcing)の一つとして営業代行を利用することで、営業のプロの力(質とスピード)で自社製品に対する見込み顧客を顕在化させることを狙います。スタートアップでなくても、新規事業立ち上げで営業養成に時間をかけてしまうことによる機会損失を回避したい場合などは、質とスピードを買うことで大事な局面を乗り切ることができます。
また新規事業の初期段階では、「いきなり大規模な営業チームを社内に抱えるのはリスクが大きい」という判断から、営業をアウトソースすることがあります。そうすることで、当該事業の進捗に合わせて機動的に営業チームを増強・縮小することができます。

このように、大量の営業パーソンを使って営業した方が効果的な場合や、スピーディーなアクションが要求される新規事業立ち上げや新製品ローンチなどの場合に、営業代行の利用が効果的です。営業代行市場が活況な背景として、新規事業の立ち上げが増えていることもあると考えられます。

社内に営業部門を持つことの意味とは

以上が営業代行を利用する主なメリットですが、外部の事業者に代行してもらうことで社内の人材が育たないというデメリットがあります。社内に営業部門がありながらも追加戦力として営業代行を使うことは、社員にとっていい刺激にもなりますが、同時に「社内の営業社員のモチベーションを低下させてしまう」こともあります。
また、いくら契約書で守秘義務を交わすとはいえ、情報セキュリティの点においてリスクが全くないわけではありません。

「質とスピードを買いたい」「社内に営業部隊を抱えたくない」という以外の多くの場合は、安易な理由で営業代行を利用することはお勧めできません。特に専門知識を要するような業界には不向きです。自社製品・サービスへの理解と愛着を持って、また成果にコミットして営業活動してくれるのは、当然ながら自社の社員です。
社内でそういう人材を育成するのは相当な時間がかかります。この時間を買うために営業代行を利用するのであれば、「ゆくゆくは優秀な営業部隊を社内で育てる」という目的を明確に持って、これを理解してくれるパートナーとしての代行業者を探すのが相応しいでしょう。

継続的に顧客の信頼に応え、事業を成長させるためには、提供する製品やサービスの品質管理(維持・向上)が欠かせません。日本に品質管理の重要性を伝え、日本の製造業を成功へと導いたアメリカのデミング博士は、品質管理に関する企業活動を「サービス調査」→「設計」→「製造」→「検査・販売」という4つの段階で示しています(「検査・販売」の後はさらに「サービス調査」に続く。通称「デミング・サイクル」)。ここから読み取れることは、品質管理全体の3分の1程度(サービス調査と販売)は営業部門が担っているということと、品質管理の第一歩(サービス調査)は営業部門から始まるということです※2
つまり、営業部門は品質管理の最大の担い手であり、ひいては冒頭で定義(広義)したとおり「営業とは事業経営そのものである」と言えます。スタートアップ企業の成功事例であるペイパルの共同創業者ピーター・ティールも、自著の中で1章を割いて営業の大切さを説いています※3。事業の永続的な発展のためには、たとえ時間はかかっても、優秀な営業パーソンを自社内で育成することが必須となるのです。当社でも若手社員向けに「営業のコツ」を考える研修を提供していますので、ぜひご利用ください。

※2 参考:『営業のQC事例集』(日科技連営業QC事例編集委員会、1986年、日科技連出版社)

※3『ZERO to ONE ゼロ・トゥ・ワン』(2014年、NHK出版)