【連載】今どきの新人・若手社員の育て方 第1回:プライベート重視の新人・若手社員、成長を妨げるリスクと成長を促すカギとは?

published公開日:2019.12.24
【連載】今どきの新人・若手社員の育て方 第1回:プライベート重視の新人・若手社員、成長を妨げるリスクと成長を促すカギとは?
新人・若手社員の育成は、いつの時代も変わらぬ大きな課題の一つ。長年担当していても、その時々で違った悩みが出てくるのではないでしょうか。では、今どきの新人・若手社員はどうすれば育つのか。
当社が行ったアンケート調査などをもとに効果的な育成方法を考察し、3回にわたってご紹介します。第1回は、新人・若手社員の意識変化や人材育成を取り巻く環境の変化を確認しながら、どのような視点を持って育成に取り組む必要があるのかを考えていきます。

労働時間をめぐる環境の変化

長時間労働の是正が声高に叫ばれる中、ノー残業デーやアウトソーシングの活用、業務の見直しなど、様々な取り組みが実施されるようになりました。2019年4月には「働き方改革関連法」が施行され、今や長時間労働削減に向けた取り組みは不可欠となっています。 ひと昔前と比べて労働時間は短縮傾向にある、そう実感し始めた方も多いのではないでしょうか。

労働時間が減少している――。裏を返せば、これはプライベートの時間が増加しているということです。 では、このような変化が、新人・若手社員の育成・成長にどのような影響をもたらすのか。 まずは、今どきの新人・若手社員が「時間」に対してどのような意識を持っているのか、その実態を見ていきます。

新人・若手の意識はより「プライベート重視」へ

当社は2014年度から、毎年4,000~5,000人程度の新入社員の皆さんにご協力いただき、キャリアに対する意識調査を実施しています。 その中で、どんな仕事に取り組みたいか、仕事を通じて何を成し遂げたいかといった「仕事への意欲」のほか、労働時間に対する考え方や時間の使い方など、「時間」に着目した調査も行っています。 下のグラフは、「20代の時間の使い方」に対する意識を年度別に示したものです。

20代の時間の使い方

まず注目していただきたいのが、「仕事とプライベートと自己投資をバランス良く」使いたい新入社員の割合です。 このグラフを見ると、2016年度までは、仕事以外の時間を「プライベート(=趣味や友人・家族とのだんらん)」だけでなく、「自己投資(=スキルアップのための自己研鑽)」にも充てたいと考える新入社員が3割を超えていました。 しかし、2017年度になるとその割合は減少し、「自己投資」が抜けた「仕事とプライベート」を優先したい新入社員の割合がトップに。 最新の2019年度の調査でも、「仕事とプライベート」優先派が一番多いという結果になりました。

また、「プライベート優先」に注目すると、2014年度はわずか4.5%だったのに対し、2018年度に10%を突破、2019年度には11.9%まで上昇しています。これらの結果から、新人・若手社員の自己研鑽への意識が年々薄れていることが見て取れます。

とはいいつつも、プライベート時間を使ってスキルアップに取り組みたいと考える新人・若手社員が一定数いるのも事実です。 自己研鑽への意欲が高い社員がいる中、プライベート時間はあくまでも自分自身の"楽しみの時間"として過ごしたい、そんな「プライベート重視型」の社員が増えている。これが、今どきの新人・若手社員の傾向といえそうです。

プライベート時間はスマホで情報収集⁇

次に、増加するプライベート時間を使って、実際に新人・若手社員はどんなことを行っているのかを考察していきます。

ここでもう一度、世の中の動きに目を向けてみましょう。ひと昔前は一家に一紙、新聞の定期購読が当たり前だったのではないでしょうか。しかし今は、スマートフォンやタブレット端末の普及もあり、新聞の購読率はどんどん減少しています。 また、以前文化庁が行った調査によると、1カ月に1冊も本を読まない20代が上昇傾向にあり、新人・若手社員の活字離れが進んでいることがうかがえます。

そこから考えられるのは、プライベート時間の多くを、スマホ・タブレットを使ったインターネットの閲覧やSNSなどに費やしている可能性が高いということです。これは新人・若手社員に限ったことではありませんが、皆さんの感覚と比べていかがでしょうか。

そう仮定したときに考慮しないといけないのが、インターネット経由の情報インプットに潜む"あるリスク"です。 もちろん、学習アプリを使った自己学習など、スマホ・タブレットには様々な使い方がありますが、ここでは、インターネットの特性である「情報が手軽に入る」ことが仕事での成長にどのような影響を及ぼすのかについてご説明します。

インターネットに潜む「思考力」低下のリスク

一般的にインターネットの情報は、書籍と違って「パッと見でわかる」構成となっていることが多いのは皆さんもご承知のことと思います。これには、情報を掲載する目的の違いが関係しています。理解・共感を求めるのが書籍だとしたら、興味を引き、集客するのがインターネット。パッと見で面白そうと思わなければ、大勢の目に留まりません。

また、50ページの書籍と聞くと、「すぐ読める!」と感じる一方、インターネットで50ページとなると、とたんに「そんな長いものは読まない!」となるのではないでしょうか。このような特性から、インターネットの情報は、一度に入る情報が少なく、かつ情報に触れた後の「解釈→思考→理解」のプロセスを踏まなくてもパッと見で知識を得られる構成が一般的になっていると考えられます。

では、もし情報源がインターネットばかりになるとどうなるのか...。「見ただけで、わかった"つもり"になってしまう」「"聞いたことがあるだけ"なのに、"できると勘違い"している」、皆さんの周りにもこんな状況があるのではないでしょうか。これこそがインターネットに潜むリスク。"知っている"ではなく"活用できる知識"の獲得に必要な、「解釈→思考→理解」の習慣がなくなってしまい、「思考力」が低下する可能性があるということです。「前後関係を見ずに、一部だけを切り取って解釈してしまう」、そんな短絡的な解釈をする癖もついてしまうかもしれません。

スマホを使って、いつでもどこでも情報を得られる手軽さがインターネットの特長でもありますが、「仕事」「成長」という視点で考えた場合、そこに潜むリスクも一緒に考えていかなければならないのです。

成長のカギは「思考の習慣」と「高効率な教育」

ここまで、労働時間の減少やスマホの普及といった社会環境の変化、新人・若手社員の意識の変化など、様々な変化とそこに潜む思考力低下のリスクを見てきました。

どのような環境であれ、仕事を進めるうえで「物事を正しく解釈すること」、つまり「思考力」が必須のスキルであることは変わりません。新人・若手社員の成長を促すには、まずは新人・若手社員を取り巻く環境や新人・若手社員の志向・思いを理解する。 そのうえで現状に即した育成手法を考え、「思考を習慣化」させる環境を整えることが不可欠です。 また、労働時間のさらなる投下が現実的でない中、限られた労働時間・経験をいかに成長につなげるか、すなわち「教育効率を高める」という視点を持って指導・育成を進める必要もあります。

当社が行った別の調査すれ違う新卒一年目社員と管理職、そのズレとはいったい? 新卒一年目社員の育成に関する調査によると、管理職が新卒社員にもっと学んでほしいこととして、論理的な思考展開、すなわち「思考力」が第2位にランクインしていることからも、新人・若手社員の思考力低下を防ぐ取り組みが必要なことは明らかなようです。

連載第2回では、「思考力低下のリスクを解消する方法」、第3回では「高効率な教育を実現し、成長を加速させる方法」についてお伝えします。