マネジメントは、「ヒト」の強み・弱みを可視化することから

published公開日:2017.08.22
企業におけるマネジメントでは、「ヒト・モノ・カネ」の管理を考える必要があります。今回のコラムでは、「ヒト」のマネジメントに焦点を当て、社員一人ひとりに求められるマネジメントとは何かを解説するとともに、人材開発で取り入れたい「タレントマネジメント」について考えていきます。

マネジメントは自分事

「マネジメント」とは、一般的に「管理」と訳され、企業においては「経営などの管理をすること、またそれをする人(経営者、管理職)」と捉えられています。「管理」の意味合いが強いことから、マネジメントは「経営者や管理職がヒト・モノ・カネを管理すること」と思われがちですが、マネジメントの本質は別のところにあります。

フランスの企業経営者であるアンリ・ファヨールは20世紀初頭、掲げた目標を達成するために必要なマネジメントの機能を「計画する」「組織化する」「リーダーシップを発揮する」「調整する」「コントロールする」の5つに分類しました※1。現在は、「計画する」「組織化する」「リーダーシップを発揮する」「コントロールする」の4つに集約され、多くの場合、この4つの機能をもとにマネジャーが取るべき行動が策定されています。

つまり、「目標を達成するために戦略・戦術を立て、強いリーダーシップで組織を管理すること」がマネジメントの本質であると考えられます。マネジメントには、「ヒト・モノ・カネ」という経営資源の配分を行いながら、成果を上げるための企画を立て、プロジェクトを成功させることができるようにチームを組織化し、リーダーシップを発揮して企業・組織、日々の仕事を管理することが求められます。マネジメントの目的は成果を上げることですから、マネジメントは「経営者や管理職だけに必要なもの」なのではなく、ビジネスパーソンなら誰しもが考えて、実践しなくてはならないものと言っても過言ではありません。

※1『マネジメント入門―グローバル経営のための理論と実践』(ダイヤモンド社)より

自分に必要なマネジメントとは?

では、一人ひとりに求められるマネジメントとは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか。本コラムでは、(1)個人・担当者、(2)リーダー・管理職、(3)経営層・幹部の3つの階層に分けて、それぞれの階層に必要なマネジメントを考えていきます。

(1)個人・担当者のマネジメント

まず、個人や担当者レベルの社員に求められるのは、自身が成果を上げるようマネジメントすることです。良い仕事をするために自分自身という“資源”をどう活かすのか、自身のスキルや課題を適切に扱える自律力を磨く必要があります。また、以前のコラム で「コミュニケーションは仕事の基本。企業活動は様々な“コミュニケーション”で成り立っている」と書いたように、立場の異なる人と関わる力を向上させることもマネジメントに欠かせない要素です。

(2)リーダー・管理職のマネジメント

リーダーや管理職に求められるのは、組織としての成果を上げることです。後輩や部下に仕事を任せてQCD(成果物の品質・コスト・納期)を管理する、ビジョンを浸透させて成果につなげるためのPDCAを回していく...というように、個人・担当者とは違い、他人を巻き込んだ一段上のマネジメントが求められるようになります。

(3)経営層・幹部のマネジメント

将来を見据えた制度設計で、組織に変革を起こすことこそが、経営層・幹部に求められるマネジメントです。事業環境が猛スピードで変化する中、古くなった仕組みは捨てて、組織に新たな風を吹き込む必要があります。強いリーダーシップや外部・内部環境の分析力、戦略策定力、事業開発力などのほか、効果的なアウトプットをする知識を身に付け、幅広いステークホルダーの期待に応えるマネジメントを行う必要があります。

ビジネスパーソンを3つの階層に分け、それぞれに求められるマネジメントと、マネジメントを円滑に行うに当たって身に付けたいスキルを説明しました。各スキルの向上には、自身の意識改革やOJTを通じた学びが不可欠ですが、研修やセミナーで体系的に知識を習得することも効果的です。個人・担当者なら、仕事の進め方やタイムマネジメント、コミュニケーションなどの研修、リーダー・管理職ならプロジェクトマネジメント、ビジネスリーダー研修、PDCAの回し方などの研修を通じて、自身の能力と課題を明らかにし、スキルを定着させていくことが有効です。経営層・幹部には、経営戦略論や組織・人事管理概論、ビジョン設定などの研修が効果を発揮します。

「タレントマネジメント」の必要性

ここまでは、ビジネスパーソンとマネジメントの切っても切れない関係性を見てきました。では、人材育成や採用活動など、「ヒト」の管理を行う「人事部」と「マネジメント」にはどのような関係があるのでしょうか。まずは、「ヒト」のマネジメントが重要視されるようになった背景から見ていきたいと思います。

企業経営において、ひと昔前までは「モノ」と「カネ」の管理が重視されていました。しかし、目まぐるしく変わる事業環境への対応には「ヒト」の能力が不可欠。「人が財産」「人財が企業経営のカギ」などと言われるように、競争優位の源泉が「設備・原材料=モノ」「資本=カネ」から「知識や知恵=ヒト」へと変化してきました。社員一人ひとりの能力を高める機会を提供し、モチベーション高く仕事に臨んでもらえば、当然パフォーマンスは向上し、結果として企業競争力の強化につながります。このような考えから、「ヒト」のマネジメントに重きを置くようになったのです。

しかし、「ヒト」をマネジメントすることの重要性について理解はすれど、なかなか思い通りにはいかないものです。それは、「モノ」「カネ」と違って、「ヒト」には感情や意思、欲求があり、能力も変化し続けるからです。「ヒト」の意思を尊重し、それを高めてくれるような能力開発の機会を提供してくれる企業であるからこそ、仕事への意欲が湧き、大きな成果が付いてくるのです。そして「ヒト」の“心”を重視する観点は「タレントマネジメント」への関心を高めるきっかけとなりました。

タレントマネジメントとは自社の「タレント(=個々の人材)」がどのような素養やスキル、個性を持っているかを特定し、採用や配置、育成、キャリア形成につなげるという手法です。タレントマネジメントがしっかりと行われていれば、予期せぬ困難に直面しても、選りすぐりの人材で迅速に対応できるといったメリットもあり、導入する企業が増加傾向にあります。

本コラムでは、タレントマネジメントの仕組みや導入方法の詳細は割愛しますが、簡単に言うと、自社の人材ポートフォリオをつくることがタレントマネジメントの第一歩です。人材ポートフォリオをつくるには、企業・組織内にどんなタイプの社員がそれぞれ何人いるかなどを分析・分類する必要があります。例えば、当社が提供するビジネススキル診断テスト「Biz SCORE Basic」 では、社員一人ひとりの強み・弱みを可視化することが可能です。このようなサービスも活用しながら、「ヒト」の能力を引き出す投資・教育を効率的に管理する仕組みを考えることから始めてみると良いのではないでしょうか。