トップダウンとは|メリット・デメリット、意識すべきポイントを解説
本コラムでは、ボトムアップとトップダウンの違いや、トップダウンの経営スタイルについて詳しく解説します。
トップダウン・ボトムアップの違い
トップダウンに対して、ボトムアップという言葉が使われます。ここでは、両者の言葉の意味を解説します。
トップダウンとは「上意下達」
企業の上層部が経営方針や構造改革などを決定して、現場の従業員に指示を出し、その指示通りに従業員たちが動いていく経営スタイルのことを、トップダウンといます。トップダウンを日本語に訳すると、「上意下達」という意味です。
トップダウン方式は、上司から部下に指示を出すときにもよく用いられ、多数の企業がトップダウン方式で経営を行っています。なじみ深い方式といっていいでしょう。
「トップダウンはワンマン経営のようであまり良いイメージを持っていない」という方もいるかもしれませんが、意思を統一しやすい、組織全体を一体化させやすいなどのメリットがあります。
ボトムアップとは「下意上達」
トップダウンに対して、ボトムアップとは、企業の上層部が従業員たちの提案や意見を集めて確認したうえで、さまざまなことを決定していく経営スタイルのことをいいます。ボトムアップを日本語に訳すると、「下意上達」という意味です。
ボトムアップ方式を用いている企業では、多くの従業員から意見を収集し、新たな製品・サービスの誕生につなげている会社もあります。
ボトムアップには、従業員たちが自らの意見をいいやすくなる、上層部にとって現場の変化が分かりやすい、若い部下たちの成長につながるといったメリットがあります。
ボトムアップに関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひこちらの記事も合わせて読んでみてください。
トップダウンのメリット・デメリット
ここからは、トップダウンのメリットとデメリットについて詳しくお伝えします。トップダウンについての知識を深めたい経営者や管理職の方は、ぜひ参考にしてみてください。
トップダウンのメリット
企業内での意思統一がしやすい
企業内で経営方針や戦略共有などの意思統一がしやすいのが、トップダウンの運営方式のメリットです。上層部と従業員の関係が良好なら、一体感や一貫性のある組織経営の実現が目指せます。
そのため、トップダウン方式での経営を行う際は、従業員との信頼関係を築く努力を怠らないことが大切です。
意思決定がスムーズに行える
トップダウン方式の場合は、上層部で意思決定が行われます。経営層という限られた人数で意思決定を行うため、スムーズでスピーディーな経営が実現できます。
スピードが求められるのは、顧客ニーズが変わりやすい市場です。エンドユーザーの声を取り入れて、素早くプロダクトに組み込むよう指示して、顧客が離れないように手を打ちます。
また、急ぎで業務改善が必要なときも、トップダウンならスムーズに意思決定が行えるので、速やかに改善に向けた対策を講じられるでしょう。
日本企業ではなじみがある方式なので中途採用者が戸惑わない
日本では、多くの企業がトップダウン方式での経営を行っています。多くの企業で採用されている経営スタイルなので、特に中途採用者にとっては職場に慣れやすいのがメリットです。職場になじみやすくする他のサポートと組み合わせれば、中途採用者の早期戦力化や、早期離職防止につながるでしょう。
さらに、日本だけでなく、アメリカやヨーロッパ、欧米系の中国企業でもトップダウンでの運営方式が一般的です。企業のグローバル化を目指して、欧米や中国の方を採用する場合も、トップダウン方式なら外国人労働者が環境になじみやすいでしょう。
トップダウンのデメリット
現場の人材が育ちにくくなる
トップダウン方式は、トップや上司に指示されたことに対して部下や従業員が行動します。そのため、指示待ちになってしまうケースがあります。トップダウン方式に偏ると、現場の人材が育ちにくくなってしまうリスクがあるのです。
自分から動けない従業員ばかりだと、現場で何らかの問題や解決策が見つかっても意見が出ず、結果的に商品やサービスの質が低下してしまう可能性もあります。
誤った判断をすると経営危機に陥るリスクがある
経営者や上位管理職が誤った判断をしてしまうと、場合によっては経営危機に陥ってしまうのも、トップダウンのデメリットです。トップダウン方式は、上層部の能力が経営にそのまま反映されてしまいます。
そうならないために、従業員と信頼関係を築いておき、時にはトップの判断に対して「NO」といってもらえる環境にしておくことが大切。また、トップ自身が経営能力を磨いておく必要もあります。
トップダウンが適しているケース
ここからは、トップダウン方式が適しているケースをご紹介します。以下の内容に当てはまるような状況のときは、スピーディーなトップダウン方式を取り入れてみましょう。
素早い判断が必要なとき
早急な事業改善を迫られているようなケースでは、意思決定がスムーズなトップダウン方式が適しています。現場で働く大勢の従業員一人ひとりから、意見を聞いていては遅すぎるためです。
速やかな意思決定により、事業拡大のチャンスを掴めたり、経営危機を脱することができたりします。ただ、スピードが大事だからといって、一般社員の声を無視してよいわけではありません。実際に業務にあたるのは彼らであるため、理由やビジョンの共有もしっかり行う必要があります。
組織体制の改革が必要なとき
組織体制の改革が求められているときも、トップダウン方式が適しています。例えば、買収や構造改革を行う際などです。
組織の構造を改革する際は、上層部がしっかりと責任を持って取り組まなければ、成功させることはできません。自社内の体制を変更するだけでなく、他社を買収して企業の地盤をより強固にする戦略も含みます。
組織体制を変えるときは、トップが現場で働く従業員に向けて、なぜ組織の構造を改革しなければならないのかを伝え、理解を得る必要があります。構造を再構築した後は、現場で働く部下だけに任せるのではなく、自分たちがお手本となって改革を成功に導く姿勢が大切です。
ボトムアップで意見が上がってこないとき
ボトムアップはトップが従業員からのアイデアや提案を収集して、決定していく経営スタイルです。しかし、ボトムアップの風土が根付いていない・社員の育成ができていないなどの理由から、現場から意見が上がってこない場合があります。トップダウン型で指示を与えつつ、現場から意見が上がるような仕組みづくりや育成を並行して行いましょう。
また、現場からの意見が多すぎて集約できないケースでは、意思決定までに時間を要してしまうため、トップダウン方式が適しています。
トップダウン型経営で意識すること
トップダウン方式で経営を行う場合、どんなことを意識すればよいのでしょうか。ここからは、トップダウンでの経営で意識するべきことをご紹介します。トップダウン方式を採用しているがうまくいかない、ボトムアップに重きを置きすぎて意見がまとまらないなどといった課題解決のヒントになるかもしれません。
目的をオープンにして共有する
経営陣トップが、何を考えているかを明示するところから始めましょう。
組織が向かう方向や達成したい目的をオープンにし、部下や現場の従業員に「何のために働くのか」を見出させるためです。共感を得られれば、能動的な行動を起こす人材が増え、会社の利益につながります。また、目的だけでなく、戦略も明示します。どのような道筋をたどるのかイメージさせるためです。
目的や戦略、経営ビジョンは、一度表明しただけでは浸透しないので、何度も言葉にして伝えていく必要があります。定期的な会合を開く・標語として張り出すといった方法で伝えていきましょう。
ワンマン経営にならないよう現場の声を聞く
トップダウン方式はワンマン経営と紙一重です。トップが独断でさまざまなことを決定し、他の従業員の意見に聞く耳を持たなければ、ワンマン経営に陥るリスクがあります。
ワンマン経営のリスクは、周囲がイエスマンばかりになってしまうこと。決定事項に穴があっても指摘できないような状況は、組織の弱体化につながります。また、経営者によるワンマン体制が長期に渡って続くと、上層部の経営能力が育たない問題も生じるでしょう。
ワンマン経営者のいる企業では、従業員の仕事に対するモチベーションが低下する傾向にあるなど、多くのデメリットがあります。ワンマン経営に陥らないためにも、現場の声を吸い上げることが大切です。
意思決定の責任を負う
トップダウンでは、経営者や上層部がやるべきことを決められる立場にあるので、何かを決定したのなら、最後まで責任を負う覚悟が必要です。
「成功したら指示した側の手柄」「失敗したら部下の責任」では、新しいことへ挑戦する気持ちや、指示を全うしようという気持ちは生まれません。トップが責任を負うことを明確にし、現場の従業員が気負わずに仕事に邁進できるようにしましょう。ただし、失敗した要因については、従業員に明確にするよう指示して改善します。
ボトムアップ・トップダウンマネジメントはバランスが重要
トップが経営方針を含むあらゆる事項を決定し、現場に指示出しを行うトップダウン方式の経営。意思決定のしやすさやなじみのある経営方法のため、多くの企業で取り入れられています。
しかし、上からの指示だけで動くというのは、現代の企業の在り方としては旧態依然としているといってもよいでしょう。現場の声を聞くボトムアップ方式も取り入れながら、トップと現場の双方で活発なやり取りがされるのが理想です。
どちらの場合も、互いの立場から意思疎通をはかる必要があります。また、現場の声を集約できる人材を配置して、効率的に提案や意見を集めなければ、厳しい市場で戦っていくのは困難でしょう。
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