今、組織に求められる意識改革と、人事・教育担当者が知っておくべきポイントとは ?
意識改革とは何か
皆さまは、「意識改革」と聞いてどんなことを想像されますか?意識改革の定義を広辞苑※で確認してみると、「今していることがわかっている状態、知識・感情・意志などの根底を改め変えること 」とあります。わかりやすく言うと、意識改革とは「今までの考え方や認識を変える」ということです。
では、企業・組織における意識改革は、具体的に何を期待し行われるものなのでしょうか。まずはその期待を明らかにするために、意識改革の目的から確認していきます。
※ 岩波書店 新村出編 「広辞苑 第六版」
意識改革の目的
ひとえに意識改革と言っても、その目的は企業によって異なります 。ここでは、「目的」の具体的なイメージを湧かせるため、 当社 のお客さまの取り組みをもとに、それぞれの目的を見ていきます。
- 「上司や取引先に言われたことを忠実にこなすことはできるが、自分から積極的に取り組む姿勢がない。取引先からも御社は受け身だと言われているため、意識を変えたい」(IT業 100名)
- 「長年、在籍している中堅社員や管理職層に、無理せずできることを最低限こなせばよい、といった受け身の姿勢が見られるようになってきた。もっと危機感を持って仕事に取り組まなければという意識を持ってほしい」(製造業 900名)
- 「管理職としての意識を持ってほしい。例えば自分のことだけではなく、部下や他部署のことを考えらえるようになってほしい」(不動産業 1,200名)
- 「取引先からは新しい提案を求められており、競合も新しい取り組みを始めている。しかし、現場は今までのやり方を変えることができていない。前例踏襲や、今まで通りでよいという意識を変えたい」(製造業 500名)
いかがでしょうか。このように、意識改革の目的やきっかけは企業によって様々ではありますが、共通しているのは、「今までの仕事のやり方や考え方を改めさせたい」ということです。とりわけ昨今の意識改革では、「環境変化に対応できる組織へと変革するために、状況に応じて仕事の進め方や事業、組織を変化させる。そのために社員一人ひとりが、今のままの仕事の進め方でよいのかを再確認し、行動を変える」ことを目的とすることが多くなっています。
意識改革が進まない2つの理由
組織における意識改革の目的とは何なのか、そしてそこに込められた期待とはどのようなものなのか 、そのイメージはつかんでいただけましたでしょうか。目的が明確にさえなれば、「意識改革なんてカンタン!カンタン!」そう感じる方も中にはいらっしゃるかもしれません。しかし、現実はそう甘くはありません。
では、目的が明確になっているにもかかわらず、なぜ意識改革はなかなか進まないのか。その理由を2つにまとめました。
1つ目は、「人は新たな取り組みを継続することが苦手である」という点です。
例えば、通勤時間の30分で、毎日必ず本を読むぞ!と決意したものの、1週間も経たずにやめてしまった経験はないでしょうか。人間の脳は、もともと現状を変えることに対して消極的な傾向があります。特に、新たに取り組んだその行動によって自分にプラスとなる効果や変化がすぐに見えないと、その行動を起こす意義を感じづらくなり、ついつい行動を継続することを諦めてしまうのです。
2つ目は、「周囲からの継続的な協力や支援、あるいは反応が得られない」という点です。
例えば、変化に対応するために新しい事業のアイデアを出してほしいと上司から指示を受け、今まで見たこともなかった業界雑誌に目を通し、アイデアを絞り出して上司に提案したとしましょう。ところが、感想をもらえるどころか、目を通してももらえない...。周囲からも何の反応もない...。こんな状況が続いたら、皆さまはアイデアを出し続けることができるでしょうか?
「反応を得られない」最たる要因としては、上司や周囲の人々も、新しい事業のアイデアを出すような経験をしたことがない、あるいはその新しい事業の分野における知識やスキルがないために、どのようにアイデアを評価し、フィードバックをすればよいか、方法が分からないことです。それに加え、上司や周囲の人々も、新しい事業のアイデアを出すことの必要性を納得していないと、評価やフィードバックが後回しにされがちです。
これを克服するためには、1つ1つの取り組みに対して「周囲の承認」=「いいね!ボタン」を押してもらい、「あ、自分の取り組みを応援してくれている人がいるのだ」と感じる必要があります。この「いいね!ボタン」が押されないと、「新しい取り組みをしなくてもよいのだ」と考え、新しい行動を諦めてしまいます。
意識改革を進めるための4つのポイント
ではここから、意識改革が進まない2つの理由を踏まえ、社員の意識改革を進めるために人事・教育担当者がおさえるべき4つのポイントをご紹介します。
(1)意識改革が必要な背景や理由、目的を社員に伝え、理解してもらう
「なぜ、変わらなければならないのか」「どのように変わらなければならないのか」「変わることでどんなメリットが得られるのか」を具体的に、そして何度も伝えることが1つ目のポイントです。変わらなかった場合のデメリットを伝え、必要性を理解してもらうのもよいでしょう。
(2)意識改革を通じて実践してほしい具体的な行動を示す、あるいは考えてもらう
意識改革の必要性を理解しても、どんなことを実践したらいいのか、なかなかイメージがつきにくいものです。
例えば、「能動的になってほしい」のなら、「能動的に情報を収集するために、毎日、新聞やWebニュースを複数読んで、
3行程度にまとめてほしい」「部下との面談を毎週10分行い、そのうち7分を部下の話を聞くことにあててほしい。また、
話をさせるための質問を事前に準備しておいてほしい」 など、取り組みやすい行動を具体的に示しましょう。意識が変わると行動が変わると言われていますが、繰り返し取る行動が変わることで、意識が変わっていくこともあります。
(3)チーム・組織で継続的に取り組む
「研修を通じて意識改革を促しているがうまくいかない」という課題をよくうかがいます。このような場合、半日程度で一方的に必要性や目的を伝える研修になっている、また1人でワークを行い、ワークの結果を提出して終わりという研修になっていることがほとんどです。もし研修を通じて意識改革を行うのであれば、「どのように意識・行動を改革するのか、その理由や目的は何か」を研修中に受講者が話し合い、その後一定期間、受講者同士で意識・行動の改革状況を確認し合う、といったチームで支える取り組みが効果的です。
また、普段のオフィスの中で意識改革を進めるには、例えば上司や人事の方などが、意識や行動の変化に注意を配り、小さな変化でも「少し考え方が変わったね」といった声かけをしてあげることが有効です。もし、以前の状態に戻ってしまっていると感じたときには、「最近、取り組みはどう?」などと声をかけ、見守っている姿勢を示してあげるとよいでしょう。
(4)意識改革を促すような環境を与える
ここまでお伝えした3つのポイントを実践すれば、少しずつ意識改革は進むことでしょう。しかし、本当に変わらないといけないと強く感じてもらい、少しでも早く改革を進めるには、「今までと異なる環境」を与えるという手段が効果的です。
例えば、「新しいサービスの責任者として、1年間でゼロからサービスを立ち上げる経験をしてもらう」「修行のため、協力会社へ1年間出向してもらう」「若手を管理職に抜擢し、本人の力量よりもストレッチな業務や、考え方を変える必要のある業務に携わってもらう」などです。「意識を変えよ」と何度も伝えるより、変えざるを得ない環境に身を投じてしまった方が早く意識改革が進むと考え、強制的に環境を変えることも、時に有効です。ただし、この方法はある種"荒療治"的な側面をはらんでいますので、周囲からの十分なサポートが必要であることを忘れないでください。
社員の意識改革 を進めるうえで、経営者や人事・教育担当者が注意すべきこと
今回のコラムでは、社員の意識改革が進まない理由を明らかにしながら、一人ひとりに意識改革を促すポイントをお伝えしました。経営者や人事・教育担当者の中は、「一日でも早く意識改革を進め、組織を強くしたい」と感じていらっしゃる方も多いと思います。しかし、ここで頭に入れておいていただきたいのが、社員の意識改革は一朝一夕で成し遂げられるものではないということです。「早く変えたい」「早く変わってほしい」という気持ちは誰にでもあるもの。しかしそこはぐっと抑え、3カ月から6カ月というように、時間をかけてじっくり根気強く取り組んでいくことが大切です。
時間をかけつつも、小さな成功の階段を設計し、一歩一歩進んでいることを実感できる仕組みをつくる。そして、本人が気づかないような小さな変化でも、それを発見したら、称讃とともにどう変わったと感じたかをきちんと伝える。そうすることで、着実に意識は変わっていきます。本コラムも参考にしていただき、焦らず急がず、でも確実な意識改革につなげていただければ幸いです。
意識改革に興味をお持ちの方は、ぜひお問合せください。企業別のカスタマイズ型研修のカリキュラム事例などを、担当者よりご紹介いたします。