【連載】会社目線で考える中途社員の早期戦力化 第1回:中途入社の社員が能力を発揮できる環境を整えるポイントとは?
中途社員とのすれ違いが"つまずき"を生む
終身雇用制度の崩壊や労働者の意識の変化を受け、今や転職は当たり前の時代。より良い環境を求めて転職を決意する労働者が増える中、企業側も高度な知識や専門スキルを期待し、中途社員の採用を積極的に進めています。
しかし、いざ中途社員を迎えてみると、「経験はぴったりのはずなのに、思ったように活躍してくれない」、そんな声が現場から聞こえてきます。一方中途社員の側からは、「能力を発揮できない」「社内の人間関係がうまくいかない」といった悩みが聞かれ、再び転職してしまう社員も見かけます。
これには当然、中途社員自身の経験やスキル、そして日々の行動が影響している面もありますが、会社としてのサポート不足やすれ違いが中途社員の"つまずき"を招いてしまうケースも多々あります。掲載中のコラム『本人目線で考える中途社員の早期戦力化~入社後"早期に"活躍するために、中途社員自身が"まず"すべきこととは?』では、中途社員の目線で、自身が活躍するための環境づくりについてお伝えしましたが、今回は、中途社員に活躍してもらうための環境をどのように整えていくのか、会社・人事目線で考えていきます。
適切なフォローが中途社員育成の第一歩
高度な専門スキルや豊富な仕事経験、業界への深い知見など、中途社員には様々な期待が寄せられますが、「即戦力としての活躍を期待して採用した」という企業も多いのではないでしょうか。
しかし、会社が変われば当然、仕事の内容や進め方も変わるため、同じ業界同じ職種の出身者を採用したとしても、その社員がこれまでと同じ成果・結果を"すぐに"出すことはできません。そのため、中途社員を"即戦力"と位置付けるのではなく、"早期に立ち上がり、戦力として活躍してくれる社員"として捉えることが大切。早い段階で戦力になってもらうために、会社側が率先して「能力を発揮できる環境」を整えていくことが重要なのです。
では、中途社員が早期に能力を発揮し、活躍できる環境づくりに向け、会社や人事、配属先の上司はどのような行動を取るべきなのでしょうか。以前ご紹介した「中途社員が能力を発揮するための4つの行動」をもとに考えていきましょう。
【中途社員が能力を発揮するための4つの行動】- ① 業務領域ごとのキーパーソンを知る
- ② 現組織の仕事の進め方を理解する
- ③ 組織や周囲から評価される行動を知る
- ④ 現組織で新たに必要なスキルを習得する
『本人目線で考える中途社員の早期戦力化~入社後"早期に"活躍するために、中途社員自身が "まず"すべきこととは?』では、中途社員自らがこれら4つの行動を実践する必要性と有効性について、具体的な取り組みとともにお伝えしました。それに対し会社側には、中途社員がこれら4つの行動を取れるよう適切に「フォローしていく」ことが求められます。1つ1つ詳しく見ていきます。
① 業務領域ごとのキーパーソンを共有する
中途社員が仕事をうまく回すには、個人の仕事、部門の仕事、部門間の仕事において、それぞれ相談する相手や了承を得る相手を知っておく必要があるというのは前回お伝えした通りです。またこれら以外にも、勤怠管理システムへの入力方法や資料の作り方など、中途社員が覚えないといけないことは本来の業務以外にもたくさんあります。
当然、これら全てをすぐに理解するのは不可能ですから、「誰が何を知っているのか」、業務領域ごとのキーパーソンを人事担当者や教育担当者から教えてあげるとよいでしょう。「経費申請なら経理課の△△さん」といった事務的な内容はもちろん、仕事の進め方などについては「わからなければ上司がベスト」、そんなアドバイスをするだけで、中途社員の意識は大きく変わります。
② 現組織のやり方でまずは仕事を進めることの必要性を伝える
中途社員に限らず、社員一人ひとりが能力を発揮するには、「組織に貢献できる人材であると周囲から認知され、周囲からの協力を得る」必要があります。そのため、「誤解を生まない仕事の進め方」を理解してもらうことが不可欠。以前の会社でのやり方と現組織のやり方を比較して、「以前の方が効率いい」からと自身のやり方で進めてしまう中途社員も多いので、配属先の上司や教育担当者から、「今の組織の進め方で、まずは1回やってみる」を促すことが重要です。
③ 組織や周囲から評価される行動を共有する
② とリンクしている部分もありますが、会社側から率先して「社内で評価される行動」を共有することも大切です。中途社員にとっては、「誰が評価しているのか」も重要な情報ですので、評価される行動だけでなく、評価者についても教えてあげるとよいでしょう。組織によっては、仕事の割り振りをしている人が評価・評判のカギを握っていることもあるので、そんなときは人事上の評価者だけでなく、社内政治的な要素も共有するのがポイントです。
④ 現組織で新たに必要なスキルの習得を促す
① でもお伝えしましたが、どんなに経験豊富で高いスキルを身につけていても、中途社員が覚えないといけないことは多岐にわたります。自社ならではの慣習・文化、情報系システムの使い方といった、ちょっとしたことでつまずいてしまうのは非常にもったいないこと。暗黙のルールやシステム利用のルールなど、整理して教えてあげるのも人事や上司、教育担当者の大事な役割です。
「前の職場と今の職場は全く違う」ことを認識させることを忘れずに!
皆さまの会社では、こういった取り組みができていますでしょうか。もちろん「入社してくれてありがとう」「これからよろしくね」という気持ちを伝えることは大切ですが、それだけでなく、ここでご紹介した4つの要素、つまり「前の職場と今の職場は全く違う環境。あなたはこういうことをやっていかないといけないんですよ」というメッセージをしっかり伝えることが、中途社員の育成には欠かせません。「前の職場と今の職場は全く違う」、これを認識できていない中途社員も意外と多いので、会社としてきちんとフォローできているか、いま一度振り返ってみてください。
次回は、中途社員を直接指導する立場である、配属先の「上司の育成」という視点で、中途社員が活躍できる環境づくりについて考えていきます。「なぜ上司を育成する必要があるの?」と思うかもしれませんが、ここにも中途社員の育成に欠かせない大事な要素が詰まっていますので、ぜひ参考にしてください。