【連載】今どきの新人・若手社員の育て方 第3回:限られた労働時間内での成長を実現、そのポイントは「仕事の意味づけ」にあり

published公開日:2020.01.14
【連載】今どきの新人・若手社員の育て方 第3回:限られた労働時間内での成長を実現、そのポイントは「仕事の意味づけ」にあり
「今どきの新人・若手社員の育て方」を検証する本連載。第1回は、新人・若手社員の意識の変化や社会環境の変化とそこに潜む思考力低下のリスク、そして第2回では思考力アップに向けた取り組みをご紹介しました。最終回となる今回は、労働時間が短縮傾向にある中、新人・若手社員の育成を効果的・効率的に行うポイントを見ていきます。

"量"ではなく"質"、時間を効率的に使って仕事の質を高めるには?

働き方改革の推進などを背景に、長時間労働の是正が叫ばれる昨今。
労働時間が短縮傾向にあることは、第1回のコラムでお伝えしたとおりです。
そのため世の中には、「仕事の質を高めよう」「効率的に仕事を進めよう」といった声があふれ、皆さまの会社でも、生産性向上へ向けた取り組みを実施していることと思います。

実際に、仕事の結果・成果につながる"量×質"のうち、今以上の"量(=時間)"の投下が現実的でない中、仕事の"質(=生産性)"を高めることは非常に大切なことです。しかし、まだ経験が浅く、"量"をこなしたことがない新人・若手社員にとって、生産性の向上、すなわち仕事そのもののやり方・進め方の"質"を本質的に改善するのはそう簡単なことではありません。

そこで人事担当者や上司の皆さんに頭に入れておいてほしいのが、「限られた仕事時間の中で、その時間をいかに成長につなげるか」という視点です。昔のように「質を量でカバーする」「量をこなして質を高める」という手法ではなく、仕事時間内での成長を促し、質の高い働き方を実現するための取り組みを行っていくことが不可欠となっているのです。

それでは、限られた時間を効率的に使い、教育・育成の効果を最大化するポイントはどこにあるのでしょうか。

仕事の経験を成長につなげるには「仕事の意味づけ」から

人の成長を促す要素の1つに、「やりがい」を持って前向きに物事に取り組むことが挙げられます。
これは仕事においても同じで、やりがいや学びへの意欲を持って仕事に取り組むことで、成長スピードは加速していきます。

そこで、重要な役割を果たすのが「仕事の意味づけ」です。『WHYから始めよ!』で知られるコンサルタント、サイモン・シネックによると、人は何かに取り組むとき、「なぜ(Why)」「どのように(How)」「何を(What)」の3つがそろうことで、意欲的に取り組める状態になるといわれています。
しかし、当社がサポートしているお客さまの声に耳を傾けると、「何を(What)」「どのように(How)」行えばいいのかは伝えているのに、「なぜ(Why)」その仕事に取り組むのか、その意味や意義まで部下に伝えている上司はそれほど多くないようです。 この状態が続くと、部下は仕事に対してやりがいが持てず、"やらされ感"が生まれてしまったり、"こなすだけ"になってしまったりと、せっかくの成長機会を逃してしまうことになってしまいます。

そのため、新人・若手社員に仕事を任せる場合は、仕事の内容や進め方だけでなく、

  • ①個人にとっての意味
  • ②組織にとっての意味
  • ③会社にとっての意味
という「Why」の部分を意識し、仕事の意味づけを行う必要があります。

具体的には、「〇〇さんの課題を解決するには、この仕事をやると△△の点で効いてくるよ」「この仕事は私たちの部門にとって、こんな意味のある仕事なんだ。だからあなたには□□の部分を担ってほしい」といった対話を通じて仕事の意味づけを行い、仕事に取り組む意欲や成長への意欲を高めてもらうことが効果的です。

また近年は、ボランティア活動などを通じて社会への貢献を感じたい新人・若手社員も増加しています。
時には、その仕事に取り組む「社会にとっての意味・意義」を伝えることも必要です。
限られた仕事時間の中で、全ての経験を成長につなげるためにも、必ず「仕事の意味づけ」まで行っていきましょう。

的確な「意味づけ」には、上司の説明力が必須

「仕事の意味づけ」の必要性と大切さは十分ご理解いただけたと思いますが、忘れてはならないことがもう1つ。
それは、的確な意味づけを行うには、「上司の説明力」が不可欠だということです。

仕事の意味づけにどんな要素が必要なのかは前段でお伝えしたとおりですが、「仕事の意味を部下が理解できる言葉にする力=言語化力」と「部下の理解度を把握し、相手に理解してもらう力=対話力」がなければ、仕事に取り組む意味・意義をきちんと伝えられず、部下が理解・納得して仕事に取り組める状況をつくれないかもしれません。

以前、「フィードバック」を取り上げたコラムでもお伝えしたように、言語化力や対話力は1カ月、2カ月といった短いスパンで向上させられるものではありません。しかし、「説明の場」を設定して、少しずつでも言語化力と対話力を鍛えていかないと、いつまでたってもスキルは高まらず、それだけ新人・若手社員への「仕事の意味づけ」もあいまいになり、新人・若手社員の成長を阻害する。そんな事態を招きかねません。

そのため、目標設定面談や目標進捗管理面談、フィードバック面談の定期的な実施など、「説明の場」をつくって日ごろから「説明する」ことを意識してもらう、また、会社としては「こんな内容で話をしてください」という話し方の指針を設定しておく。このような取り組みを続けていくことで、上司の「説明力」を高めていくことも、新人・若手社員の成長に欠かせない要素の1つといえます。

連載を終えて ~日々の何気ない業務にも成長の機会

3回の連載を通じて、労働環境の変化、新人・若手社員の意識や学ぶ環境の変化を確認し、変化に対応した効果的な教育・育成方法を探ってきました。

当社が実施したアンケート調査では、第1回でお伝えした「プライベート時間を重視する」といった傾向以外にも、多くの新人・若手社員が「楽しくてやりがいのある仕事」や「自身の成長につながる仕事」を求め、成長への意欲が十分にあることも明らかになっています。しかし、当然ながら仕事は"楽しくやりがいのあるもの"ばかりではないため、成長に向けて前向きに業務に取り組んでもらうには、「日々の何気ない業務の中にも目的やゴールがあり、業務に取り組んでいく中で成長できる」ことを日頃から伝えていくことも大切です。

また、労働時間が減少する中、仕事時間内の取り組みが最重要であるものの、新人・若手社員の「自発学習」に頼らざるを得ない部分があるのも事実です。そして、キャリアアップに向けた取り組みを「何もしていない」新入社員が3割近くいることもまた事実。新人・若手社員を取り巻く環境の変化や新人・若手社員の傾向、そして教育・育成する上司側に必要な要素を確認し、いま一度これからの時代の新人・若手社員の育成について考えてみてはいかがでしょうか。