自己成長する新入社員を育てるための内定者フォロー・内定者教育の在り方
近年の新人の傾向
企業の皆さまは、近年の新入社員、内定者の状況にどのような変化を感じているでしょうか。
内定者教育、新入社員教育の新しい在り方を考えるためには、対象者となる新人世代の特徴を把握することが大切です。
近年の新人世代が育ってきた時代環境を踏まえ、新入社員・内定者の特徴をまとめると以下の点が挙げられます。
社会人基礎知識(常識)が低下している
(教わった経験が少ない、学ぶべき基本教養や常識が備わっていない)
失敗を恐れ既知の範囲内で行動する
(厳しさ・チャレンジからの回避、ちょっとした障害に弱い)
仕事も大切だがプライベート重視の思考である
(プライベートの時間確保のため定時終了を強く望む)
真面目で仕事にはコツコツ取り組むが、将来への強い希望や願望をもちチャレンジする姿勢が弱い
また、企業の採用活動においては、2017年卒の選考開始時期は2016年卒に比べ、2カ月前倒しの6月開始となりました。このことで採用活動が短期化し、求人倍率も高まっており、学生の売り手市場が続いています。
その結果、学生(内定者)は自己分析や仕事の在り方を考える時間がないまま、マニュアル化した就職活動で多くの内定を獲得し、安易に内定辞退をしていく状況に陥っています。
経営者や人事担当者は、内定者自身の特徴と採用活動などの内定者を取り巻く環境の変化を常に把握し理解しておくことが、内定者教育の第一歩となります。
内定者フォローの取り組みの重要性
内定者によっては、社会へ出ることへの不安を抱えている場合があります。そのため、企業は内定者の不安を払拭するためにも彼らの心理を正しく把握し、必要な内定者フォロー施策を行うことが大切です。
昨今、一人の学生が複数の会社から内定を得る場合が多いため、学生にとって本当の意味で、自分が活躍できる会社かどうかを思い描くことができません。そのため、「この会社で大丈夫だろうか?」「本当にこの仕事でいいのだろうか?」といったような、内定者の不安を取り除くことが必要になります。
ここで、学生の不安要素を4つご紹介します。
- (1)人間関係に対する不安(先輩・上司や同期とうまくやっていけるのか?)
- (2)仕事内容・キャリアに対する不安(この仕事は本当に自分に合っているのか?)
- (3)自分の成長に対する不安(この会社で本当に成長できるのか?)
- (4)会社の将来への不安(この会社の将来は大丈夫なのか?)
上記の不安を解消するために、以下に施策の一例をご紹介します。
- 既存社員への相談の機会の提供
- 職場見学会・仕事の体験の場の提供
- 同期の結びつきを強めるためのSNSの活用や同期会の実施
- 社会人として成長していくための学ぶ機会(内定者研修、内定者勉強会、学習ツールなど)の提供
- 会社の将来像の伝達と内定者への期待を伝える場を設定
- 会社行事や活動への積極的な巻き込み
- 人事担当者への相談窓口の設置と細やかな内定者フォロー
内定者フォロー施策を実行する際に最も肝心なことは「誰が」「どのように対応するのか」をしっかりと決めて対応できるよう、「受け入れ側を整備すること」です。
就活を終えた学生になぜその会社に決めたのか尋ねると、
「人事担当者が親身に相談に乗ってくれた」
「質問に最も丁寧に答えてくれた」
「尊敬できる先輩がいて、一緒に働きたいと思った」
といったことが挙げられます。
これは、内定期間中に企業が内定者をフォローすることによって形成されていく、会社への期待と信頼の現れです。
新入社員教育・内定者教育の課題
新入社員教育・内定者教育において、多くの企業が抱える課題としては現場側から
「教育した結果が新人の成長に大きく役立っていると感じられない」
「社会人の基礎とマナーを理解できていない、行動もできない」
という切実な声があります。
なぜそのような結果を招いてしまうのか、チェックできるポイントをご紹介します。
人の意識変革・行動変革には時間がかかるがその時間を与えていない
人の意識の変革は行動の変革をもたらしますが、人はその変革を瞬時に実施できるわけではありません。意識が変わり、その結果として行動が少しずつ変わっていくものであり、小さな行動変容をし続けることが本人の自信と挑戦意識をもたらし、最終的に大きな変革・成長につながるのです。内定者教育は、この点を意識して取り組むことが重要です。
新入社員になってから短期集中の詰め込み教育で消化不良となっている(理解不足・実行不可)
入社後すぐに新入社員研修として、短期間のうちに、事業内容やビジネスマナー、社会人としての基礎スキルなど、多くのことを詰め込んでいる状況が散見されます。その結果、理解するどころか消化不良をおこし、混乱してすべてが中途半端な状態になることがあります。教育を実施する側の自己満足になっていないか、新入社員の目線で教育計画ができているか、多角的に考慮する必要があります。
ビジネス基礎知識・ビジネスマナーをアウトプットする場がなく、実践できない状態のまま現場に配属している
短期間のうちに多くのことを学ばせようと、インプット中心でアウトプット不足に陥ることがあります。知識のインプットはとても大切なことで、知識がないことには意識の変革も実行も得ることはできません。しかし、インプットだけでは本当の意味で新入社員が成長したことにはなりません。実際にアウトプットすることではじめて知識やスキルが身に付きます。
内定者が求めていることと企業側の考え方のギャップがある
内定から適切な入社準備の時間と機会(内定者教育)を阻む要因があります。
「内定者には、学生最後なのだから学生らしく過ごしてほしい」と考える企業は多くあります。
一方で内定者からすると、「この会社にこのまま入社して大丈夫だろうか?」「本当にこの仕事でいいのだろうか?」と、不安に感じている可能性もあります。
現代の新卒の傾向として、真面目であるがゆえに不安を抱え、心では入社準備のサポートをしてもらいたい、と思っているのも事実です。このような双方の考えのギャップを埋めるためにも、企業側として内定期間中から内定者の要望(不安解消)をサポートする必要があります。
内定者を取り巻く状況を踏まえ、企業としてどのような新入社員教育、内定者教育を実施するとよいのか、この機会にぜひ改めて考えてみてはいかがでしょうか。
自己成長する内定者教育・内定者研修の在り方とは
内定者教育・内定者研修を成功させるためのポイントを3つご紹介します。
(1) 社会人になるためのマインド醸成と学習の習慣化
社会人になっていくために適切な準備期間を設けることは大切なことです。
成長するビジネスパーソンになるために特に重要なことは、「社会人としての仕事へのマインド(考え方)」と、自ら成長するための「学ぶ習慣」を身に付けることです。内定期間中は適切な時間をかけてマインド醸成と学ぶ習慣付けのために内定者教育を行うことをお勧めします。
<内定者研修の例>
- 内定者を定期的に集めて社会人としての考え方、会社として大切な考え方を伝え意見交換する研修を実施
- 内定者に親和性の高いモバイルを活用した内定者研修を実施
(内定者のスタイルに合った研修環境にてマインド・スキル・学ぶ習慣を強化)
(2) 新入社員からの早期戦力化のために必要なスキル
マインド(考え方)と行動(ビヘイビア)を変えるためには、必要な知識をインプットすることが重要です。
人の変化のプロセスに基づき考えると、その人の持つ「経験・知識」が「ものの見方(目線・視点)」を創り出し、「ものの見方(目線・視点)」がその人の「思考」になります。そして、「思考」が「行動」へとつながり、「行動」した結果により「成果」が生み出されます。つまり、人は知識・経験がないと現状と同じ思考となり、目線・視点は変わらず、当然行動も変わりません。まずは、必要な知識を消化不良とならないように人の変化のプロセスに基づき、知識習得することをお勧めします。
<必要な知識の例>
- 信頼される社会人のビジネスマナー
- 活躍する社会人の心構え
- 活躍する社会人の基本行動
- コンプライアンス
- 会社を知る(会社の意義、構造、仕組みを知る)
- ビジネスコミュニケーション
- 傾聴力
- プレゼンテーション
- ビジネスライティング力
- 論理的思考力
- タイムマネジメント
- パソコンスキル
(3) 学習した知識を行動でアウトプットしスキルの定着化
学んだことを実際にアウトプット(実践)することにより、効率的・効果的な成長を期待できます。
もちろん、アウトプットする場を提供するためには、アウトプットをする時間を確保する必要があります。そのためには、多くの企業が実施している、入社から配属までの間の新入社員研修の中でまとめてインプットする教育を変えることが、一つの解決方法です。それは、内定者研修の実施によりインプットの時期を早め、入社後の新入社員研修では、知識習得を前提に多くの時間をアウトプットに活用することです。アウトプット中心の研修スタイルにより、効果的な教育による新人の早期立ち上がりが期待できます。
ここで重要なのは内定者研修ですが、内定者全員を定期的に集めることは、時間・場所・コストの面から困難なため、内定者に合った隙間時間に学習できるモバイルなどを活用した内定者育成をお勧めします。
内定時代から最初の入社3年間はゴールデンエイジといわれ、自己成長できる人材を育てるためにとても重要な期間です。本コラムで企業の皆さまが今後の新入社員教育・研修、内定者教育・研修の在り方を発見するきっかけになれば幸いです。