英語学習だけでは終わらない「マインド」を鍛えるグローバル人材育成のための社員研修
グローバル人材育成で英語学習をする目的と特徴
このコラムを読まれている方が仮に企業の社員研修の担当者だとして、「グローバル人材」と聞いてどのような人材を思い浮かべるでしょうか。多くの方がまず「英語が使える」といったイメージではないでしょうか。もちろん、全く英語が使えないと海外とのやり取りは難しいですが、大学レベルの英語でも十分に仕事で会話できます。むしろ、グローバル人材として重要なのは英語よりも海外案件に立ち向かえる「マインド」にあります。
ここで、実際に経団連が行った調査「グローバル事業で活躍する人材に求められる素質・知識・能力」について紹介します。
- 1位:海外との社会・文化、価値観の差に興味・関心を持ち、柔軟に対応する姿勢
- 2位:既成概念にとらわれず、チャレンジ精神を持ち続ける
- 3位:英語をはじめ外国語によるコミュニケーション能力
3位に英語が出てきていますが、英語力というよりはコミュニケーション能力がポイントになっています。
上記の調査で示されたコンピテンシーは既に「グローバル・マインドセット」として体系化されていますので、詳しく見ていきましょう。
グローバル・マインドセット
- 知的資本
- 国際ビジネスに関する知識や学習能力のことで、自分のやり方がグローバルレベルでどれだけ通用するかを理解する能力。
- 心理的資本
- 文化への寛容さと変化への順応力、つまり新しいアイデアの受容力。
- 社会的資本
- 人脈を築き人々を束ねバックグラウンドや見解が異なるステークホルダー(同僚、顧客、サプライヤーなど)に影響を与える能力。
マンスール・ジャビダン他(2011).「グローバル・マネージャー5000人以上への調査が明かす世界で通用する人材の条件」, Diamondハーバード・ビジネス・レビュー, 36.より引用
これらは、自分とは異なる人々との間に信頼関係を築く力で構成されています。
こうしたコンピテンシーが必要とされるグローバル人材を育てるために、企業はどのような社員研修を設計すればよいでしょうか。
社員研修でグローバル人材と英語学習に関するメソッド
まずは英語の教育から考えていきましょう。ただし、ここではあくまで「英語はただの道具」とお考えください。
多くの日本人は英語を苦手と感じ、流暢に話さなければだめだ、格好悪いと思いこんでいる傾向があります。しかし、実際はそこまで心配することはありません。日本のビジネスマンが英語で話す相手の9割はアジア人であり、そうした相手も必ずしも英語が得意というわけではないからです。英語が苦手な者同士、あくまで意思疎通の便利な道具として英語を使っているに過ぎないのだと考えれば、英語研修の社内導入や受講者への案内で心理的ハードルが下がるのではないでしょうか。覚える英語も、自分の仕事に関連した専門用語の英語訳を中心に学習することで自然に興味が湧きますし、ビジネス上のやり取りは相手も自分もその道の専門家なので、業務に即した用語の方が伝わりやすかったりします。簡単な文法・単語と専門用語を駆使して説明できるようになれば、商談や打合せもスムーズにできると思います。
そして、英語研修の導入のめどがついたところで、次にメンタル面を強化する社内研修の導入を検討してみてください。このコラムの前半で触れた経団連の調査結果や、グローバル人材のコンピテンシーを見ていただくと分かるように、周りからの支援が薄い状況で、一人で異文化に入り込む能力の方が、英語の学習よりよっぽど重要かつ得難いものになります。例えば現地駐在員として派遣された日本人は、多くの場合現地のナショナルスタッフに品定めされます。よくある話としては、「現地スタッフは必要な情報を伝えてくれない」「指示を出しても素直に従わない」などの例が挙げられます。こうした状況で成果を出していくには、やはり単なる英語力ではなく、他人をうまく動かしたり、自分をコントロールしたりする感情能力が意味を持ってきます。
海外出張経験が豊富な当社の社員によると、「東南アジアでは、現地の方との英語会話はとてもシンプル。文法構造も非常に単純で、時には単語を並べているだけといったこともあります。お互いの母国語が混ざってしまうことも多々ありますが、それでも意思疎通はできます。それよりも大事なことは、相手の気持ちや価値観、国の文化や風習を理解し、異文化を受け入れる心構えと変化への順応力が必要だと思います」と語っています(もちろん契約交渉など等で正確性が強く求められる場合は、通訳を帯同する等の対応が必要になるのでご留意ください)。