プレゼンテーションを成功に導くストーリーのポイントとは?シナリオ設計で失敗しがちな5つの特徴
プレゼンのシナリオ作成術、ストーリー構築に失敗したプレゼンの特徴
以前のコラム で「プレゼンテーションの目的は、聞き手にこちらの意図したアクションを起こしてもらうことである」ということをお伝えいたしました。今回は、プレゼンテーションを成功させるための要素の1つ、シナリオ設計についてご紹介していきます。
シナリオ設計とは、プレゼンテーションの目的や方針、流れなどを設計することをいいます。簡単に言い換えると、「誰に、どんな行動を取ってもらうために、どんな内容を、どんな順番で話すかを考える」ということです。伝わるように話す「デリバリー力」ももちろん大切ですが、そもそも何を目的にどんな話をするのかがきちんと設計されていなければ、どんなにうまくプレゼンテーションをしても相手にアクションを起こしてもらうことはできません。では、プレゼンテーションを成功させるためには、どのようなシナリオを設計すればよいのでしょうか。プレゼンテーションの成否を分けると言っても過言ではない、シナリオ設計のポイントを見ていきましょう。
シナリオ設計に失敗しているプレゼンテーションの5つの特徴
シナリオ設計のポイントを確認する前に、シナリオ設計ができていないプレゼンテーションの特徴を5つ紹介していきます。読み進めていただくと、プレゼンテーションにおけるシナリオ設計の大切さと、シナリオ設計のポイントが見えてくるはずです。皆さんのプレゼンテーションはこれらの特徴に該当していないか、確認しながら読み進めてください。
(1)いきなり資料を作成し始めている
もしかしたら、ほとんどの人がこの特徴に当てはまっているかもしれません。プレゼンテーションの準備をする際に、いきなりPowerPointを立ち上げてしまう。もしくは、個々のページを作り始めてしまう。このような方々は、そもそもシナリオ設計の重要性に気づけていません。細かいページの1つ1つは、全体の設計あってのことです。きちんとシナリオ設計をしている人は、まずはペンを手に取り、紙に向かって考える時間を必ず取っています。さて、皆さんは、シナリオ設計をする時間をきちんと取っているでしょうか。
(2)プレゼンテーションのゴールが自分視点になっている
皆さんは「プレゼンテーションのゴールは何ですか?」と聞かれた時に、どのように答えますか。その答えが「○○を伝える」「○○を説明する」「○○をお勧めする」など、自分が主語の言葉になっている方は要注意です。このようなゴールを設定しているということは、「自分がどう話すか」ばかりに気を取られてしまっており、聞き手の行動を促す工夫が考えられていないということになります。例えば、「部長に、新しい印刷機を導入するメリットを説明する」というゴールを設定している場合、「緊張しないように話そう」「セリフを忘れないように話そう」という工夫しか考えられません。
一方、「部長に、新しい印刷機を導入することに同意してもらう」という、聞き手が主語になっているゴールを設定するとどうなるでしょうか。「同意をしてもらうためには、どんな情報が必要かな」「そもそも部長は、導入するかどうかをどんな基準で判断しているんだろう」など、相手に行動してもらうためにどうしたらいいかを深く考えるようになります。このように「聞き手が主語のゴール」は、シナリオを深く設計するための出発点になります。皆さんのプレゼンテーションのゴールは何でしょうか。改めて考えてみてください。
(3)誰に対しても同じシナリオでプレゼンテーションをしている
相手を本気で動かそうとすれば、プレゼンテーションのシナリオは相手によって変わってくるはずです。例えば、「社内の人に、経費申請の手続きを守ってほしい」というプレゼンテーションをする場合。手続きを守るべきだと思っている人にプレゼンテーションをするのであれば、正しい手続きの方法や、ミスを防ぐ方法を伝えれば十分かもしれません。しかし、手続きを守らなくても良いと思っている人にプレゼンテーションするのであれば、その人たちに「なぜ手続きを守ることが重要なのか」「手続きを守らないことにどんなデメリットがあるのか」といった情報を強く伝える必要があります。
このように本当に相手を動かそうと思えば、誰に対しても同じシナリオでプレゼンテーションをするということはないはずです。「自分には、いつでも使える得意なプレゼンテーションの流れがあるんだ」と思っている方は、もしかしたら相手を無視した独りよがりのプレゼンテーションになっているかも知れません。
(4)聞き手の気持ちを動かす仕掛けが組み込まれていない
皆さんのプレゼンテーションには、聞き手の気持ちが動いて、「よし、行動しよう」と思わせる仕掛けが組み込まれているでしょうか。聞き手の気持ちを動かす仕掛けとは、平たく言えば「適切な情報を、適切なタイミングで伝える工夫」のことです。
例えば、「お客様に、新しい印刷機を導入してもらいたい」という場合。お客様が今の印刷機に満足している場合は、「今の印刷機が持つ隠れたデメリット」という情報を伝えると、気持ちが動くかもしれません。あるいは、「新しい印刷機を使った人の感動の声」という情報を伝える工夫も有効かもしれません。また、これらの情報を伝えるタイミングにも工夫が必要です。お客様の気持ちとかけ離れた情報を冒頭でいきなり伝えると反感を買ってしまう可能性があります。このような場合は、情報を伝えるタイミングをプレゼンテーションの中盤以降に持ってくるとよいでしょう。
このように、聞き手の気持ちを動かすような仕掛けが組み込まれていなければ、プレゼンテーションの目的は達成できません。聞き手にも「わかりやすかったな」「おもしろかったな」という感想しか持ってもらえず、プレゼンテーションそのものが徒労に終わります。聞き手の行動を促すために、気持ちを動かす工夫ができているかどうかも確認してみてください。
(5)プレゼンテーションで伝えたいことを30秒以内で述べられない
30秒はあくまで目安ですが、成功するプレゼンテーションは伝えたい内容が明確で、どれだけ長いプレゼンテーションであっても伝えたいことは簡潔にまとめられます。伝えたいことが30秒以内に述べられないということは、プレゼンテーションを行う本人が何を伝えたいのか理解しきれていないということです。このような状態でプレゼンテーションに臨んでも、聞き手に与えるメッセージがぼやけてしまい、行動を取ってもらうことはできません。シナリオを設計する際には、「自分はこのプレゼンテーションで何が伝えたいのか」という問いかけを何度も繰り返す必要があるのです。
プレゼンテーションの成功はシナリオ設計にあり
ここまで、シナリオ設計がうまくできていないプレゼンテーションの特徴をご紹介してきました。ここまでの内容をまとめると、シナリオ設計をする際には
- (1)「相手に何をしてもらいたいのか」というゴールを明確にする
- (2)相手がどんな人なのかを深く考える
- (3)相手の気持ちを動かす工夫を考える
というポイントを実践する必要があるということが見えてきます。このような綿密なシナリオ設計があって初めて、相手にアクションを取ってもらえるプレゼンテーションができるのです。ここまで見てきた特徴のどれかに当てはまってしまった人は、改めてご自身のシナリオ設計を見直してみてください。
当社サービス『Biz CAMPUS Basic』でも、シナリオ設計のポイントをお伝えする研修 をご用意しております。プレゼンテーションのシナリオ設計について学び直したいという方は、ぜひご参加ください。次回以降、プレゼンテーションのデリバリーについてもご紹介していきます。