企業の目標を達成するために必須となる「タレントマネジメント」

update更新日:2023.10.18 published公開日:2022.11.21
企業の目標を達成するために必須となる「タレントマネジメント」
目次
2010年頃から日本企業でも注目され始めた「タレントマネジメント」。海外では、限られた人員で企業の目的を達成するためのメソッドとして一般的な知識ですが、近年は日本企業でも導入が広がっています。
本コラムでは、タレントマネジメントを実践するための基本的な考え方から導入方法、導入時の注意点まで紹介しています。

タレントマネジメントとは

タレントマネジメントは、従業員の能力やスキルを活用して、組織のパフォーマンスを最大化するためのメソッドです。概念自体は1990年代に誕生しており、欧米企業を中心に広まったとされます。その後、2010年頃より日本企業でも一般的となりました。

タレントマネジメントでは、従業員が持つ能力やスキルを重要な経営資源として捉え、そのうえで個人や組織の情報をデータ化し、一元管理するのが特徴です。データ化された情報は分析・可視化して、人事戦略の策定などに役立てることができます。

タレントマネジメントシステムとは

個人や組織の情報は膨大であり、データ化したからと言って簡単に管理できるものではありません。そこで、管理者の作業数を大幅に削減するために生まれたのがタレントマネジメントシステムです。タレントマネジメントシステムとは、タレントマネジメントを活かして人材開発や人材配置を行うための支援ツールやソフトウェアのことを指します。人材情報をシステムに登録すると分析やシミュレーションを行ってくれるので、対象となる社員が多い場合は効率よくタレントマネジメントを行えます。

タレントマネジメントがなぜ注目されているのか

タレントマネジメントが日本でも注目されるようになった理由としては、働き方の多様化、労働人口の減少、労働時間の見直しなどが考えられます。それぞれの理由を見ていきましょう。

働き方の多様化に伴う転職やフリーランスの増加

政府が「働き方改革」を進めたことにより、転職希望者やフリーランスの人口が増加しています。会社に出勤して働くのが当たり前ではなくなり、一人ひとりの労働者を適切に管理するのが難しくなりました。また、1つの企業に長く勤める人も減っています。

そこで、時短勤務や在宅勤務など、さまざまな業務形態で働く人材を、適切に管理・配置するためにタレントマネジメントが注目されました。従業員へのロイヤルティ獲得、エンゲージメント向上なども期待できるため、優秀な人材が長く働いてくれる効果も期待できます。

人口減少による優秀な人材確保の難しさ

日本では急速な少子高齢化が進んでおり、2010年を境にして人口が減少に転じました。それに伴い労働人口も減少しており、各企業では優秀な人材の確保が目下の課題です。

特に知名度でアピールしにくい中小企業は、採用競争に打ち勝つのが難しい現状にあります。そのため、新しく人を雇うのではなく、今いる従業員のパフォーマンス向上も視野にいれなければなりません。彼らに高いパフォーマンスを発揮してもらうには、各従業員の能力やスキルを把握することが必須。加えて、効率よく成果を出すためにも、タレントマネジメントが注目されているのです。

長時間労働の見直しのため適材適所の配置が求められている

タレントマネジメントの考え方は、働きやすい環境の整備や労働時間の見直しにも一役買っています。

企業が従業員の能力やスキルを把握できれば、適材適所への人材配置が可能です。従業員は自分がやりたかった仕事・自信のある仕事で能力やスキルを発揮できれば、仕事へのモチベーションにもつながります。また、今まで長時間かかっていた仕事を配置転換によって効率よくこなせるようになれば、従業員の負担も減り、残業時間削減にもつながるでしょう。

タレントマネジメントの目的

労働人口の減少や働き方の多様化など、ここ10~20年ほどで日本企業を取り巻く環境は大きく変化しました。特に限られた労働人口から優秀な人材をいかに確保するかは、各企業にとって重要な課題です。

各企業がタレントマネジメントを導入する最大の目的は、自社で優秀な人材に長く働いてもらえるようにすること

優秀な人材の定着のためには、モチベーションの維持やキャリア開発も必須です。1人の従業員に長く働き続けてもらうためには、働きやすい環境作りと適材適所への配置、キャリア形成のフォロー、ライフスタイルの変化に合わせた勤務形態への変更など、さまざまな対応をしなくてはいけません。その一助となるのが、タレントマネジメントの考え方なのです。

タレントマネジメントの効果

タレントマネジメントは、人材確保が困難な状況でも企業が成果を上げるために重要なメソッドです。自社に導入して適切に運用できれば、以下のような効果を期待できます。

  • 優秀な人材の育成
  • 生産性を向上させるための適切な人材配置
  • 職務適性や傾向を把握した採用

人材育成における活用

社会の変化に対応するためには、企業において優秀な人材へと育成していくことが不可欠です。タレントマネジメントを活用することで従業員の強み・弱みを把握し、一人ひとりの課題を可視化できます。これにより、各従業員に最適な研修を実施すれば、企業にとって必要な人材の確保が可能です。外部からではなく内部から必要な人材を発掘し、採用コストを削減できるのもタレントマネジメントを活用するメリットでしょう。

人材配置における活用

タレントマネジメントは、生産性を向上させるための適切な人材配置にも役立ちます。従業員の能力やスキルをデータ化すれば、どの人材をどこに配置すべきかが可視化できるからです。例えば、営業部で実力を発揮できなかった人材が、他の部署に異動した途端に業績を上げることも珍しくありません。

このように適切な人材配置ができれば、従業員のパフォーマンスの最大化が期待できます。

採用における活用

タレントマネジメントの導入により得られる3つ目の効果は、職務適性や傾向を把握した採用が可能になることです。近年は急速な少子高齢化で労働人口が減少しています。どの企業においても人材確保が難化しており、優秀な人材をピンポイントで採用しなければなりません。

そこでタレントマネジメントを活用すれば、企業が求める経験や能力、スキルを持った人材像を明確に設定できます。また、採用した人材がどの配属先に適しているのかも把握でき、人材の定着にもつなげられるのが魅力です。

タレントマネジメントの導入方法5ステップ

タレントマネジメントの導入には以下5つのステップがあります。ポイントを押さえて適切に運用しましょう。

  1. (1)自社の人材情報をまとめる
  2. (2)育成方法や採用などの計画をまとめる
  3. (3)計画に沿って人材の育成や配置、採用を行う
  4. (4)タレントマネジメントの成果を評価する
  5. (5)評価をもとに改めて計画して運用する

(1)自社の人材情報をまとめる

まずは、自社の現状を把握するために、人材の情報を抽出しましょう。ピックアップする内容は氏名・学歴・経歴・資格・配属・人事評価など、分かっていることすべてです。

次に、情報を数字やデータとしてまとめ、誰が見ても分かるように可視化してください。

(2)育成方法や採用などの計画をまとめる

集めた人材情報をタレント(スキルや適性など)ごとのグループに分けましょう。それをすることで、育成計画を立てる際に、どのタレントを伸ばすべきかが明確になります。人員の不足が出そうなタレントがあれば、優先的に育成計画を立ててください。また、人員に余裕があるタレントは配置転換なども検討しておく必要があります。事前に、各部署とも連携をとっておくとよいでしょう。

(3)計画に沿って人材の育成や配置、採用を行う

立てた計画に従って人材の育成や配置、採用を行います。自社の経営戦略と人事戦略の関連性を伝えておけば、各社員も納得して仕事に取り組んでくれるでしょう。また、事前に立てた計画は運用中であっても柔軟な修正が必要です。タレントマネジメントの運用の目的を意識して、計画に従うことが目的にならないように注意してください。

(4)タレントマネジメントの成果を評価する

タレントマネジメントを自社に導入したら、成果を評価してください。導入前と導入後で、どのような変化があったのかを比較することが大切です。タレントマネジメントを活用すると、各社員が希望するキャリアも明確になっていきます。そのため、上司と部下による1 on 1なども実施して、評価時に活かしましょう。

(5)評価をもとに改めて計画して運用する

タレントマネジメントは計画の策定から評価までで終わりではありません。1度目の評価を終えたら、次の計画策定に結果を活かす必要があります。評価すると、当初の計画通りになっていない育成や配置が見えてくるはずです。社員の能力やスキルをさらに伸ばせるように、計画を改善しながら継続して運用しましょう。

タレントマネジメント導入時の注意点

タレントマネジメントはただ導入すれば成果が出るのではなく、適切な運用が必要です。タレントマネジメント導入時の注意点として、以下の3つを紹介します。

  • 自社に導入する前に社員の理解を得る
  • 効果測定と軌道修正を行う
  • PDCAサイクルを回して継続する

自社に導入する前に社員の理解を得る

タレントマネジメントを自社に導入する際は、取り入れる目的を明確にし、全社員で共通の認識を持つことが重要です。「何を目的としてタレントマネジメントを導入するのか」を社員が理解していなければ、どんなに優秀なメソッドでも効果を発揮できません。また、業績向上や人材育成などの目的を意識し、手段であるタレントマネジメント自体が目的にならないようにしてください。

効果測定と軌道修正を行う

タレントマネジメント実施の際に立てた計画は、必ずその通りに進むわけではありません。また、タレントマネジメントを導入してもすぐに効果は出ないので、効果測定も兼ねた定期的なチェックを行うようにしましょう。また、定期的に効果測定を行い、必要に応じて軌道修正します。軌道修正を行う際は、部署全体や他部署との連携状態なども俯瞰して、偏りのない修正を行いましょう。

PDCAサイクルを回して継続する

最後に、タレントマネジメントを導入したら、PDCAサイクルを回して継続してください。一度のマネジメントで効果が出ても満足せず、継続することが自社の業績向上につながります。なぜなら、成功した取り組みも、時間の流れとともに通用しなくなる可能性があるためです。

タレントマネジメント導入時の注意点をしっかり把握して、適切な運用を行いましょう。

タレントマネジメントを活かした人事ができるように

社員の育成や配置により業績向上を図りたいなら、タレントマネジメントを導入してみる、という選択肢も一つです。急速に変化する社会の中で自社の目標を達成するためには、社員の能力やスキルを把握したうえで、適切な人材育成や配置転換をするのが重要です。

ALL DIFFERENTの「組織・人事管理概論研修」では、組織・人事管理に必要な知識や考え方を身につけられます。自社へのタレントマネジメント導入を検討している方は、本研修もご活用いただき、お取り組みの参考にしていただければと思います。

「組織・人事管理概論研修」は こちら