コンフリクトとは?組織への影響と発生原因、解決法を紹介

update更新日:2024.09.17 published公開日:2024.09.19
コンフリクトとは?組織への影響と発生原因、解決法を紹介
目次

ビジネスの現場では、異なる意見や価値観がぶつかり合い、コンフリクトと呼ばれる緊張状態が生じることがあります。コンフリクトは、適切に扱えば組織の成長を促進するものの、管理を誤ると組織の一体性を損なう可能性も。そのため、慎重かつ効果的なマネジメントが求められます。

本コラムでは、コンフリクトの本質と発生原因、組織への影響、効果的な解決策について解説します。

コンフリクトとは

コンフリクト(Conflict)とは、英語で「衝突」「対立」「争い」を意味する言葉です。ビジネスの文脈では、異なる意見や利害が衝突し、容易に妥協点を見いだせない状況を表します。

コンフリクトは、個人間だけでなく、部署間や企業間など様々なレベルで発生する可能性があります。

従来の日本企業文化では、「和」を重んじる傾向から避けるべきものと捉えられてきました。しかし、近年の研究によって、コンフリクトを適切に扱えば組織の成長を促進する可能性があることが明らかになっています。

ビジネスシーンにおけるコンフリクトの例

実際にビジネスの場で生じるコンフリクトの例として、以下のような状況が挙げられます。

【コンフリクトの具体例】

コンフリクトの例 事象の具体例
部門間の対立 営業部門と製造部門で、納期や品質に関する意見が食い違う
上司と部下の意見の不一致 プロジェクトの進め方や優先順位について、上司と部下の考えが異なる
同僚間の競争 昇進や重要な案件の担当をめぐって、同僚間で激しく競い合う
経営方針の対立 会社の将来的な方向性について、経営陣内で意見が分かれる
世代間ギャップ 若手社員とベテラン社員の間で、仕事の進め方や価値観の違いが顕在化する

これらの例が示すように、コンフリクトはビジネスの様々な場面で発生し得る現象です。

コンフリクトが特に発生しやすい状況

コンフリクトは、特に以下のような環境で発生しやすいといわれています。

不確実性の高い環境

今日の企業は、急速に変化する顧客ニーズ、めまぐるしい技術革新、予測困難な自然災害など、多様な不確実性に直面しています。このような流動的な環境下では、組織内に相反する要求や方針が生じやすく、それがコンフリクトの火種となることが少なくありません。

多様な人材が共存する職場

グローバル化の進展や働き方改革の推進により、性別・年齢・国籍・専門性など、多様なバックグラウンドを持つ人たちがともに働く機会が増加しています。多様性の高い環境はイノベーションを生む可能性もある一方で、それぞれの価値観や仕事の進め方が違うことによって、コンフリクトが生じる可能性も高まるでしょう。

コンフリクトの発生原因

組織内で生じるコンフリクトは、主に以下の3つのパターンに分類できます。これらは、それぞれ単独で発生することもあれば、複数のパターンが絡み合って複雑な形で現れることもあります。

(1)条件の対立

1つめは、業務内容や取引条件の違いから生じる対立です。品質、コスト、納期設定、優先順位などの条件の相違が原因となります。例えば、取引先からの厳しい納期要求や、本社からの大幅なコストカット指示などが典型的な例です。

限られた資源(人材、資金、時間、情報など)の配分をめぐる競争も、条件の対立を生み出す要因となり得ます。

(2)認知の対立

2つめは、価値観や物事の捉え方の違いから生じる対立です。ある社員が革新を重視する一方で、別の社員が伝統を重んじる場合など、価値観や物事の捉え方の違いから意見の衝突が起こることがあります。

組織内で共通の目標が不明確な場合や、部門間の協力関係が弱い状況では、この種の対立が発生しやすいでしょう。

(3)感情の対立

3つめは、個人的な感情や人間関係の問題から生じる対立です。過去のトラブルや誤解、嫉妬などの感情的要因が根底にあることが多いようです。

感情の対立によるコンフリクトは問題の本質が見えづらく、解決が困難になるため、特に複雑化しやすい傾向があります。

コンフリクトの組織への影響

これまで見てきたように、コンフリクトは様々な原因から生じます。その結果、組織にどのような影響を与えるのでしょうか。

コンフリクトの性質や管理の仕方によって、その影響は大きく異なります。ここでは、組織にとって有益な「生産的コンフリクト」と、有害な「破壊的コンフリクト」の2種類に分けて、それぞれの特徴と組織への影響をご説明します。

生産的コンフリクト

生産的コンフリクトは、組織に以下のような利点をもたらします。

【生産的コンフリクトの影響】

影響 説明
イノベーションの促進 異なる意見や価値観の衝突が、新しいアイデアや解決策を生み出す原動力となる
コミュニケーションの活性化 建設的なコンフリクトを通じて、社員間の率直な意見交換が促進され、組織内のコミュニケーションが活性化する
社員のモチベーション向上 コンフリクト解決のプロセスへの参加が、社員の意見尊重感とモチベーション向上につながる

破壊的コンフリクト

一方で、組織に深刻な悪影響を及ぼすコンフリクトもあります。

【破壊的コンフリクトの影響】

影響 説明
チームワークの低下 社員間の対立が深まり、組織の分裂や目標達成の阻害につながる
組織内のストレス増加 関係する社員のメンタルヘルスに悪影響を及ぼし、生産性の低下や欠勤率の上昇を招く
意思決定の遅延 コンフリクト解決に時間がかかり、重要な意思決定が遅れ、組織全体の業績に悪影響を与える
社員の離職 コンフリクトの慢性化により、社員のモチベーションやエンゲージメントが低下し、優秀な人材の離職につながる

破壊的コンフリクトの中でも、特に深刻な影響を及ぼすのが「ハイコンフリクト」と呼ばれる状態です。具体的には、以下のような状況を引き起こします。

  • 貴重な時間、信頼、エネルギーの浪費
  • 仲間同士の対立の激化
  • 現実認識の歪み

ハイコンフリクトの状態が長期化すると、最終的には組織全体に悪影響がおよび、健全な機能を失う恐れがあります。

コンフリクトマネジメントの重要性と手法

このような破壊的コンフリクトに対し、企業は早急に対処する必要があります。そこで重要となってくるのが、コンフリクトを効果的に解決するための手法、「コンフリクトマネジメント」です。

まずは、コンフリクトマネジメントの代表的な手法の一つ、「二重関心モデル」についてご説明します。

二重関心モデルとは

二重関心モデルとは、1970年代に、心理学者のケネス・W・トーマスとラルフ・H・キルマンによって考察された、コンフリクトの解決方法を分析するためのフレームワークです。コンフリクトの状況において、「自分の意見・利害」と「他人の意見・利害」をどの程度重視するかによって、以下の5つの型に分類されます。

【二重関心モデルの5つのパターン】

パターン 説明
強制 自分の意見・利害のみを重視する
協調 双方の意見・利害を重視する
服従 他人の意見・利害のみを重視する
回避 衝突を避け、対立など存在しないかのように振る舞う
妥協 自分の意見・利害と他人の意見・利害の両方をある程度考慮し、落としどころを探る

5つの行動パターンのうち、「妥協」は物事をスムーズに進めるための、現実的な解決策に見えるかもしれません。しかし、両者の根本的な問題解決に至らないため、最も効果的な選択とはいえません。

安易な「妥協」を繰り返すのではなく、双方の意見や要求、利害の背景にある原因を理解し、「協調」に基づいた解決策を見いだすことが重要になってきます。

コンフリクトマネジメントを行うメリット

次に、コンフリクトマネジメントを適切に行うことで、企業にどのような利点をもたらすのか、具体的な効果を見ていきましょう。主なメリットは以下の4つです。

【コンフリクトマネジメントによるメリット】

メリット 具体的な効果
組織の活性化と成長
  • 新しいアイデアの創出促進
  • 組織の対応力と柔軟性の向上
  • 時代の変化への適応力強化
コミュニケーションの改善
  • 率直な意見交換の促進
  • 立場や年齢に関係ない自由な発言環境の構築
  • 組織内のコミュニケーションの活性化
社員のモチベーション向上と定着率改善
  • 意見が尊重されることによる高いモチベーション維持
  • 働きやすい職場環境の整備
  • 社員の離職率低下
イノベーションの促進
  • 多様な意見の交換による斬新なアイデアの創出
  • 若手社員を含む全社員からの新たな発想の促進
  • 古い慣習にとらわれない組織文化の形成

コンフリクトマネジメントによる効果的な解決方法

最後に、コンフリクトマネジメントを効果的に進めるための具体的な手順とポイントをご紹介します。

コンフリクトマネジメントの実践手順

コンフリクトマネジメントを行う際は、準備から分析、合意、予防までのプロセスを、以下のような流れで進めていくとよいでしょう。

①相互理解のための会合の設定

組織全体で「コンフリクトは成長の機会」という認識を共有し、相互理解を深める場を設定します。双方が自由に話せる、中立的な環境を用意します。

②原因の特定と分析

両者に平等に発言の時間と機会を与え、コンフリクトの根本原因を「条件の対立」「認知の対立」「感情の対立」の観点から分析し、特定します。この段階で問題の本質を見極めることが、解決への第一歩となります。

③客観的な解決策の提示

客観的に状況を分析し、調査結果に基づいて、適切な解決策を提案します。解決策を検討する際は、どちらかの意見を優先するのではなく、双方の意見を平等に扱います。まずは意見の一致点を明確にし、その後で相違点を整理しましょう。

④合意形成と協力体制の構築

提示された解決策から、双方が納得できる着地点を見いだし、合意形成を目指します。この過程で、関係者間の相互理解をさらに深めることが重要です。

⑤予防のためのフォローアップ

解決策の実行後も状況を継続的にモニタリングし、必要に応じて軌道修正を行います。関係者間の理解が深まることで、将来的に、類似したコンフリクトの再発防止にも役立つでしょう。

コンフリクト解決のポイント

コンフリクトマネジメントを効果的に進めるための、3つのポイントをご紹介します。

迅速に対応する

コンフリクト発生時は、迅速な対応が重要です。放置すると組織内のストレスが高まり、状況が悪化する可能性があります。

人ではなく問題に焦点を当てる

誰が悪いかではなく、何が問題かを見極めることが大切です。当事者に解決策を提示する段階で、不必要に感情的対立に発展しないよう、伝え方は十分に配慮しましょう。

オープンな姿勢で臨む

マネジメントを行う際は、企業側もオープンな姿勢で臨みましょう。コンフリクトの存在を認め、その解決過程を透明化することで、組織全体にポジティブな雰囲気が広がります。