リテラシーとは?ビジネスでの意味やメリット、企業内で高めるポイント

update更新日:2024.12.18 published公開日:2024.02.19
リテラシーとは?ビジネスでの意味やメリット、企業内で高めるポイント
目次

リテラシーは現代のビジネスシーンで不可欠なスキルです。本コラムでは、リテラシーの基本的な意味と、ビジネスにおけるその具体的な役割を解説します。さらに、リテラシーが企業にもたらすメリットやリスク、ITリテラシーが高い人の特徴、高めるポイントについて紹介します。

リテラシーとは何か?‍

まずは、リテラシーという単語自体の意味について簡単に見ていきましょう。

リテラシーの意味や使い方

近年、リテラシーという言葉は「情報やメディアを使いこなせる能力」という意味で使われています。

もともと、英語の「literacy(リテラシー)」は「読み書きの能力・識字能力」を意味する言葉です。その意味がより広く解釈され、「知識や情報を収集し、有効活用する能力」という意味合いで、様々な言葉と一緒に使われるようになりました。

特に多く耳にする関連語では、以下のようなものがあります。

  • ITリテラシー
  • 情報リテラシー
  • デジタルリテラシー
  • メディアリテラシー
  • 金融リテラシー
  • ビジネスリテラシー

他にも健康関連では、以下のような用語も見られます。

  • 健康リテラシー
  • メンタルヘルスリテラシー

これらは、特定の分野に関する知識や理解力、知識の活用能力を指します。

コンピテンシーやモラルとの違い

リテラシーとの違いを問われる言葉として、「コンピテンシー」や「モラル」があります。ここでは両者の違いを解説します。

コンピテンシーとリテラシーの違い

コンピテンシーとは、英語で「能力・適性」という意味を持ちますが、ビジネス分野では、「ある業務において、安定的な成果を出している人材に共通して見られる行動特性」を指します。

リテラシーとコンピテンシーは、「能力」という点で類似性があり、一見同じような言葉に見えるかもしれません。しかし、リテラシーは問題を解決する知識を身につけることを示しています。

なお、リテラシーとコンピテンシーはともにジェネリックスキル(汎用スキル)と呼ばれており、業界や業種を問わず、様々な場所・場面で必要なスキルとされています。

ジェネリックスキルに近い言葉として、ポータブルスキルや移転可能スキルなどもあり、最近では、人材採用における評価ポイントとしても注目されています。

モラルとリテラシーの違い

モラルとリテラシーは「〜してはいけない」という観点の部分で共通性があるものの、性質は異なります。

モラルは「道徳」や「倫理」を表す言葉です。一般的に、人々が生活していく中で守るべきルールや規範、それらを反映した個人の良心などを指します。

例えば、日常生活におけるモラルは、善悪の判断や安全な集団生活を送るための基準とされます。ビジネスシーンにおいてのモラルは、社会的信用の獲得やコンプライアンスの観点で重視され、チームメンバーや顧客と信頼関係を構築し、ビジネスを円滑に進めるためにも重要です。

一方で、リテラシーは特定の分野の知識や知識を活用するためのスキルであり、必ずしも善悪の判断に焦点を当てているわけではありません。

リテラシーの種類‍

リテラシーは、各分野で多様な用語と組み合わせて使用されます。今回は、主にビジネスに関係が深いリテラシーの種類を見ていきましょう。

ITリテラシー

ITリテラシーは、コンピューターやサーバ・ネットワーク、インターネットの使い方など、IT全般における活用スキルを指す言葉です。より細かな分類として、情報リテラシー、ネットリテラシー、コンピューターリテラシーなどに分けることがあります。

情報リテラシー

情報リテラシーは、膨大な情報の中から目的に応じた適切な情報を選び出し、活用できるスキルです。ITリテラシーの同義語として扱われる場合もあります。

総務省による情報リテラシーの定義は、狭義には「IT機器の活用や操作スキル」を意味し、広義には「機器の操作能力だけでなく、情報の活用に関する知識とスキルも含む」としています。

また、情報リテラシーの概念に、新聞や雑誌、他者からの伝聞など、IT機器の活用によらない情報の収集や活用まで含めるケースもあります。

*参考:総務省「平成10年版 通信白書」情報リテラシーの定義

ネットリテラシー(インターネットリテラシー)

ネットリテラシー(インターネットリテラシー)は、インターネットを使ううえで、様々なリスクを認識し、それらのリスクを回避または低減させる対策をとりながら、適切に活用する知識やスキルです。ネットリテラシーの中には、情報セキュリティリテラシーという、セキュリティリスクを認識し対処するための特化したスキルも含まれます。

ネットリテラシーの具体的な項目には、次のような例があります。

  • 著作権や肖像権など、違法な情報に関するリスクの認識と対策
  • 不適切な投稿など、有害な情報に関するリスクの認識と対策
  • 迷惑メールやSNSでのいじめなど、不適切な情報の発信・接触に関するリスクの認識と対策
  • フィッシングやネット上の売買など、不適正取引に関するリスクの認識と対策
  • インターネット上の情報による過大消費、インターネットへの依存、歩きスマホなど、不適切な利用に関するリスクの認識と対策
  • プライバシーの侵害、個人情報の流出など、プライバシーに関するリスクの認識と対策
  • ID・パスワードの不正利用やウイルスへの感染など、セキュリティリスクの認識と対策

これらはインターネット上で情報を扱う際に必須のスキルです。ビジネスシーンで細心の注意が必要な、個人情報や企業機密などの漏洩や、ID・パスワードの流出などのリスクを回避します。

私生活でも、迷惑メールやフィッシング詐欺、不適切なSNS投稿によるトラブル防止などに役立つでしょう。

コンピューターリテラシー

コンピューターリテラシーとは、コンピューターをはじめとするIT機器を安全に使用し、目的に応じてスムーズに操作できる能力のことです。具体的には、ソフトウェアやアプリケーション、データ活用などに関する知識や能力を指します。

現在の社会では、パソコンやスマートフォン、タブレットなど、多数のデバイスを使用する機会があります。IT技術は日進月歩で発展しており、一般的なアプリケーションだけでなく、企業特有の社内システムやクラウドサービスも存在します。

そのため、コンピューターリテラシーは一度習得すれば完了というものではありません。効果的にIT機器を使い続けるためには最新情報を確認し、必要に応じて新しいスキルを学び、迅速に習得することが大切です。

メディアリテラシー

メディアリテラシーは主にメディアを通じた情報の取得や取捨選択、発信などを適切に行うための知識・スキルです。

前述した情報リテラシーと似た意味で使われることもありますが、メディアリテラシーはテレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webサイトなどのメディアを通じた情報の活用能力を指します。

また、総務省では、放送分野のメディアリテラシーを構成する3要素として、以下を挙げています。

【総務省によるメディアリテラシーの3要素(放送分野)】

  • メディアを主体的に読み解く能力
  • メディアにアクセスし、活用する能力
  • メディアを通じコミュニケーションする能力。特に、情報の読み手との相互作用的(インタラクティブ)なコミュニケーション能力

メディアからは毎日膨大な量の情報が発信されています。その中には、特定の立場に立脚した情報・主張もあれば、真偽が定かではない情報も含まれています。

現代のビジネスパーソンは、そのような大量の情報から、適切なものを主体的に選択し、活用する能力が必要です。単に情報を収集するだけでなく、正確性を見極めて効果的に活用する能力が欠かせません。

*参考:総務省「放送分野におけるメディアリテラシー」

金融リテラシー

金融リテラシーとは、金融に関する知識を持ち、活用できる能力を指します。これには、家計の管理から金融商品の理解、投資や資産形成の基礎知識などが含まれます。また、金融詐欺への備えや経済動向の把握なども重要な要素となります。

日本ではこの金融リテラシーの向上が課題となっています。金融広報中央委員会による2022年の金融リテラシー調査によると、日本人のインフレや分散投資に関する知識は国際的に見て低いことが指摘されました。

ビジネスパーソンにとって、金融リテラシーは業務上の判断や行動に直接影響します。財務状況の分析、資金調達方法の選択、金融トラブル防止など、適切な金融知識は様々な場面で重要です。

私生活でも金融リテラシーは重要な役割を果たします。特に近年、特殊詐欺による金融被害が日々報告されており、個人レベルでの対策が急務となっています。さらに、成人年齢の引き下げに伴い、若年層の早期金融教育も新たな課題です。

*参考:金融広報中央委員会「金融リテラシー調査(2022年)のポイント」

ビジネスリテラシー

ビジネスリテラシーとは、ビジネスの現場で必要とされる知識や能力全般を指し、「社会人基礎力」と呼ばれることもあります。

具体的には、以下のような知識やスキルが含まれます。

  • タイムマネジメント力
  • 論理的思考力
  • 情報の読み解き能力
  • データ分析力
  • 会計の基礎知識
  • 労働法の理解
  • コミュニケーション能力
  • 課題解決力

ITリテラシーが高い人と低い人の特徴

ITリテラシーは、情報処理能力やツールの活用力などに大きな影響を与えます。ここでは、ITリテラシーが高い人と低い人の主な違いを3つの観点から見ていきましょう。

情報処理と分析能力

ITリテラシーが高い人は、多様な情報源から効果的に情報を収集し、的確に分析する能力に長けています。重要で信頼できる情報を見極めて適切に活用し、フェイクニュースや誤情報に惑わされにくい傾向があります。

一方、ITリテラシーが低い人は、限られた情報源に頼りがちです。情報の信頼性を見極めるのが難しく、誤情報に振り回されることが少なくありません。このような状況を改善するには、ITリテラシーに関する研修を受けることが効果的です。

テクノロジーとツールの活用

ITリテラシーは、最新のツールやテクノロジーへの適応力に大きく影響します。ITリテラシーの高い人は、新しいソフトウェアやアプリケーションの使用方法をスムーズに習得し、効果的に使いこなせます。

対照的に、ITリテラシーの低い人は新しいツールの導入などに抵抗感を持つことがあるでしょう。抵抗感を克服し、新しいツールを効果的に活用するためには、基本的なデジタルスキルの研修などを取り入れ、徐々に適応力を高めることが重要です。

リスク認識と対応能力

ITリテラシーに含まれる情報セキュリティリテラシーが高い人は、潜在的なリスクを事前に察知する能力に優れています。情報漏洩や不正アクセスなどのリスクを把握し、予防策を講じられるでしょう。

一方、情報セキュリティリテラシーが低い人は、セキュリティリスクの重要性を見逃す可能性があります。企業の信頼性低下などの深刻な問題を招く恐れがあるため、注意が必要です。リスクに適切に対応するためには、情報セキュリティに関するリテラシーを高める研修を取り入れるとよいでしょう。

リテラシーが高いことによる4つのメリット

リテラシーの高さは、個人や組織に様々な利点をもたらします。高いリテラシーがもたらす4つの主要なメリットについて詳しく見ていきましょう。

業務効率の向上

多くのリテラシーに共通する要素に、情報収集や機器に関する知識や活用能力があります。特にITリテラシーや情報リテラシーが高いことで、効果的な情報収集と分析・活用ができるため、業務効率が大幅に向上します。

目的に合わせて情報や機器を適切に扱えるため、業務の無駄を省き、迅速な対応ができるメリットがあります。

効果的なリスクマネジメント

高いリテラシーは、「何がリスクになるか」を的確に判断し、適切に対応する能力を高めます。

例えば、ITリテラシーやメディアリテラシーが高いと、不適切な情報源やフェイクニュースを見分け、セキュリティ問題に適切に対応できるといったメリットがあります。また、金融リテラシーの高さは、投資や借り入れなどに役立ち、詐欺を回避するなど、資金面での安全管理にメリットをもたらします。

円滑なコミュニケーション

高いリテラシーは、円滑で効果的なコミュニケーションを実現します。ITリテラシーが高い人は、電話やメールに加え、チャットツールやビデオ会議ツールなど、様々なコミュニケーションツールを活用できます。これにより、情報伝達の効率が上がり、チーム全体のコミュニケーション能力の向上も期待できるでしょう。

正確で信頼性の高い情報発信ができる

リテラシーが高いことで、情報の質と影響を十分に理解したうえで、正確で信頼性の高い情報発信が可能になります。特に、SNSやオウンドメディアが普及した現代では、情報リテラシーやメディアリテラシーの高さが適切な情報発信に大きく貢献します。

これらのリテラシーが高いと、各メディアの特性を理解し、対象となる読者に合わせた適切な内容と表現で情報を発信できます。その結果、不適切な発信によるリスクを最小限に抑え、炎上などのトラブルも回避できるでしょう。

リテラシーが低いことによる3つのリスク

リテラシーが低いことは、企業活動において深刻なリスクを伴います。ここでは、主な3つのリスクについて紹介します。

業務の効率化やIT化の遅れ

リテラシーが低いと、業務のIT化や効率化が進みにくいというリスクがあります。新しいシステムやツールの導入が難しくなり、ペーパーレス化や情報共有の改善が停滞することもあるでしょう。その結果、生産性の向上が妨げられ、競合他社に後れを取る可能性があります。

情報の正確性と信頼性の低下

情報源が多様化する現代では、膨大な情報が容易に入手できるようになりました。このような環境下でリテラシーが低いと、信頼できる情報を見分けることは容易ではありません。誤った情報や信頼性の低い情報を鵜呑みにしてしまうと、業務上の判断ミスや誤った意思決定につながるリスクがあります。

情報格差の拡大

組織内でITリテラシーや情報リテラシーのレベルに大きな差があると、情報格差が生じるリスクがあります。

ITリテラシーの違いによって仕事の進行やコミュニケーションに支障をきたし、情報をうまく活用できない社員が不利な状況に陥る可能性もあるでしょう。また、この格差は世代間のコミュニケーションの障壁にもなりかねません。

社内におけるITリテラシー教育のポイント

このように、各種リテラシーは、ビジネスやその周辺領域において、非常に重要な能力です。ITリテラシーが高い社員の育成は、業務効率化や信頼性向上、リスクマネジメントの強化に直結する効果的な取り組みです。

最後に、社内におけるリテラシー教育のポイントを3つご紹介します。他分野のリテラシー教育にも応用できる内容ですので、ぜひお役立てください。

社内のシステムや環境を整備する

社員のITリテラシーを高めるためには、実際にシステムやアプリケーションを操作できる環境を整備することが重要です。

パソコンやタブレットなどのデバイスの支給、利用するためのID・パスワードの発行、業務で使用するシステムやアプリケーションのインストールなどを行い、実際に社員が操作できるよう準備します。実践的な環境を整えることで、操作を通じて理解が深まり、効率的にITリテラシーを高められます。

ITリテラシー教育を実施する

社内で実際にITリテラシー教育を実施する段階では、社員のレベルがどれくらいか、自主的な学習が可能かどうかを見極めましょう。

ITリテラシーが低い場合、自主的な学習を促しても勉強方法自体がわからなかったり、教材の説明を理解できなかったりするケースがあります。このような場合は集合研修がおすすめです。実際に画面を見ながら、講師による操作手順の解説などを踏まえて、学習する機会を設けましょう。

ある程度自主的に学習できる場合は、各自のタイミングで学習を進められるe-ラーニングという方法もあります。5分程度で1ユニットを終了できるような、すき間時間に学習できる教材がおすすめです。

また、学習中に疑問が生じた場合に質問できるサポート制度も効果的です。すでに高いITリテラシーを持っている社員や外部の研修会社などに、相談対応や個別課題に応じた研修を依頼するとよいでしょう。

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定期的なレベルチェックや資格取得支援を行う

リテラシー教育は、学んだあとの定着具合を定期的にチェックすることが重要です。

特定のアプリケーション操作であれば、できることを段階的に示してスキルを確認します。情報収集や分析の能力については、「適切な情報源から情報を取得できる」「フェイクニュースを判別できる」といった、具体的なチェック項目を設定するとよいでしょう。

加えて、資格取得支援を行うことで、社員のスキル向上をさらに促進することができます。資格取得は、学んだ知識を実践で証明する手段であり、社員の自信を高めるとともに、業務におけるスキルの向上にも寄与します。

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