株式会社髙島屋 三田理恵氏  多様な人材の「働きがい」を支える髙島屋の職場環境作り 株式会社髙島屋 三田理恵氏  多様な人材の「働きがい」を支える髙島屋の職場環境作り

「各業界で活躍されているあの人は何がすごいのか?」をコンセプトに、各業界の有識者から“成長の秘訣”や“仕事論”を赤裸々に語っていただくHR×LEARNING スペシャルセミナー。

2025年2月7日開催のセミナーは、株式会社髙島屋より人事部 ダイバーシティ推進室 室長の三田理恵氏にご登壇いただきました。190年以上の歴史をもつ髙島屋は、なぜ管理職や経営層での女性比率が大きく向上したのか。髙島屋の歴史や百貨店の特徴とともに、具体的な施策を赤裸々に語っていただきました。

今回のレポートでは、髙島屋で受け継がれてきた多様性の精神、人的資本投資とユニークな育児短時間勤務制度とともに、一人ひとりの働きがいを大切にする職場づくりのヒントをお届けします。

創業から続く髙島屋のESG経営の精神
“多様性のるつぼ”として
現場の声に向き合う百貨店

髙島屋は、1831年に古着木綿商として京都で創業しました。現在は国内百貨店13店舗、海外百貨店4店舗を展開。正社員の56.2%を女性が占め、平均勤続年数でも、女性社員が男性社員を上回る“26.7年”となっています。2014年にダイバーシティ経営企業100選に選出、2017年には女性が輝く先進企業「内閣総理大臣賞」を受賞するなど、ダイバーシティの取り組みにおいて多くの認定・表彰をされてきました。

髙島屋のESG経営の精神は、創業にまで遡ります。例えば、創業の精神である「店是」にある「顧客の待遇を平等にし、いやしくも貧富貴賤に依りて差等を附すべからず」という言葉は、特定のお客さま層に偏重することなく、広く国民大衆にとって身近な存在であるべきという社会性に根差した髙島屋の在り方を表しています。このようなお客さまに対する公平な姿勢は、社内の取り組みにもつながり、1979年には東証一部上場企業初となる女性重役が生まれました。

現場で働く方々を見ても、髙島屋が自社で雇用する従業員は2割程度。多数の取引先からスタッフが集まり、雇用形態や店舗形態も一様ではないことから、「百貨店は多様性のるつぼ」と三田氏は語ります。髙島屋は、現場の多様性を背景に、男女雇用機会均等法の施行以前から、現場の全ての声を拾い労使が対等に協議する「SAY活動」なども続け、一人ひとりの「働きがい」に向き合ってきました。

創業200周年に向けた
「あるべきグループ像」と人的資本投資

2031年、髙島屋は創業200周年を迎えます。この記念すべき年に向けて策定されたのが、グループの目指す姿であるグランドデザインの「7つのあるべきグループ像」。海外展開や価値提供、ESG経営といった項目が並ぶ中で、今回詳しく紹介されたのが「働く場としての魅力向上」でした。

働く場としての魅力向上とは、「企業と個人が共感し成長していくことで、働きたい・働き続けたいと思える企業文化・風土を実現」するというもの。グループ経営理念「いつも、人から。」のもと、人的資本投資を進めています。

髙島屋の人的資本投資は、労働条件・労働環境の改善から従業員の意欲と能力、エンゲージメントの向上につなげることで、生産性を上げ、利益を創出する。その利益によって、さらに労働条件と環境の改善を進める、という好循環を回していくことを意味します。

2024年は、グランドデザイン浸透に向け、従業員一人ひとりが主体的に実践するための「行動宣言シート」や車座ミーティングを実施。従業員エンゲージメント調査では、わずか1年で「経営理念・ビジョンへの共感」「会社との適合感」のスコアがそれぞれ1ポイント以上改善しました。

現場の声から拡充した
9パターンの育児短時間勤務制度

今回のご講演で参加者が大きな関心を寄せた施策の1つが、育児との両立支援のひとつである、育児短時間勤務制度です。髙島屋ではかねてより、従業員の希望を聞きながら育児休職制度や育児短時間勤務制度の拡充を進めてきました。

現在の育児・短時間勤務制度は、男女問わず原則として子が小学4年生に達するまで取得可能です。ここで最大の特徴となるのが、育児・短時間勤務5パターン以外に用意された「F勤務」と呼ばれる体制です。F勤務は、短時間勤務とフルタイム勤務を組み合わせて働ける制度で、この追加で髙島屋の育児・短時間勤務は9パターン用意されています。育児・短時間勤務で働きつつも、従業員自身の家庭の状況・業務都合に合わせてフルタイム勤務日を設定できるものです。

重要な会議や商談がある日や、子どもの世話を家族などに任せられる日にたくさん働けるというメリットから、育児短時間勤務を利用する従業員の約半数がF勤務を活用するまでになりました。

また、1991年以前から運用してきた育児休職制度では、取得可能な条件である子の年齢を満1歳から満3歳までに拡大。2020年には経営トップから「男性育休100%企業宣言」を発信し、4年連続で男性の育休取得100%を達成しています。

百貨店としての
アンコンシャス・バイアスへの取り組み

このように先進的な施策を進める髙島屋ですが、百貨店ならではのアンコンシャス・バイアス*という課題もありました。三田氏は、「百貨店業界は、性別役割分担意識と共存してきた」と言います。
*アンコンシャス・バイアス…自分自身では気づいていない「無意識の偏見(思い込み)」のこと

“女性はインフォメーション係やエレベーター係、販売員”
“男性は売り場責任者や外商担当、催事担当”

過去のこうした役割の振り分けが、結果として性別役割のイメージを再生産してきた歴史があるからです。

髙島屋では2022年に100年の歴史をもつ女性制服を廃止。社長自らがアンコンシャス・バイアスへの取り組みにコミットし、全部門長を集めたフォーラムでも発信することにより、髙島屋全体でアンコンシャス・バイアスへの意識を強化してきました。それだけでなく、研修・全社朝礼や社内広報においても継続的に取り組んでいます。

近年は、こうした男女のアンコンシャス・バイアスに加えて、LGBTQの理解促進・環境整備にも注力。2024年はアライ活動の取り組みも開始しました。

従業員の活躍を支える職場づくりに
不可欠な姿勢を具体化した質疑応答

講演の最後に、三田氏は「理念や方針も重要だが、それだけではなく、トップが実践を積み上げていく。これが現場の行動変容につながる」という村田善郎社長の考えを紹介。質疑応答で女性の活躍推進やF勤務にかかるマネジメントの負担を尋ねられると、「会社としてどうあるべきか」という共通認識をトップとマネジメントがもつこと、マネジメント層本人が短時間勤務になる際に他のマネージャーが支援に入り“チームで業績を上げていく”ことの大切さを語りました。

セミナー後のアンケートでは、「長い積み重ねの中で、1つ1つ丁寧に従業員と対話してきた様子が非常に参考になりました」「エンゲージメント向上に課題を感じていましたが、多くのヒントをいただきました」「当たり前が変わっていく世の中で、会社としての在り方を模索する必要性を感じました」といった感想が寄せられ、誰もが働きやすい職場づくりを先進的に実現してきた髙島屋の取り組みから、大きなヒントを得られたことがうかがえます。

今後も、様々な業界から有識者の方をお招きし、皆様のビジネスのヒントをお届けします。詳細は、HR×LEARNINGスペシャルセミナーの特設サイトにてご案内しておりますので、ぜひご覧ください。また、ご興味のあるテーマやご要望、どんな小さなお悩みでも、どんどんお寄せください。

三田氏のSPECIAL Words 一隅を照らす 三田氏のSPECIAL Words 一隅を照らす

一隅を照らす
現在のポストについた1年目、外部研修に派遣され、プログラムの中で現役経営者の方のお話を聴く機会がありました。そこで経営者の方がおっしゃっていたのがこの「一隅を照らす」という言葉です。

経営者として、「一人ひとりが、自身の役割をまっとうすることが組織にとって重要であり、一人ひとりが欠かせない人材である。」ということを強く信じ、現場に入り込み従業員一人ひとりと欠かさず対話を重ねているお話を伺いました。

その後、この言葉は天台宗の最澄による言葉で、
「一人ひとりが自分のいる場所を自ら照らせば、それが積み重なってこの世全体が照らされる」という意味を持つことを知り、まさにダイバーシティの考え方そのものだと、時代を超えた言葉に感銘を受けました。

私自身、DE&Iを推進していく立場としても大切にしたい言葉であり、また一企業人としても、自分自身の在り方に迷ったときも常に立ち返るところだと感じています。

今、自分自身がいるところで、自分ができることを真摯にやる、それが組織や社会にとって意味があることにつながることを、従業員だけでなく子供たちの世代にも伝えていきたいと思います。
(三田氏)

※全て開催時の情報です