去る2015年11月9日、企業の人事ご担当者および社長をお招きし、当プロジェクトの調査研究の結果発表とともに、調査結果に基づいた各層の育成のポイントについて皆さまとともに考えるイベントを開催しました。当日は小雨が降る中、約850名の方にご参加いただきました。
最初のプログラムは中原先生による調査結果の発表です。発表の冒頭、先生から当プロジェクトのテーマ「中小企業の人材育成を科学する」について触れられました。「経営者なら誰でも人材育成に対して一家言あると思うがそれは『KKD(勘と経験と度胸)』の域を出ない」と喝破、人材育成に「科学」の視点を入れることで「あの社長であの体制だったから、たまたまうまくいった」ではなく、普遍的なメカニズムを解明し、再現性のある育成方法を見いだすことを目的としている旨を述べられました。
先生からの発表の論旨は大きく2点で、「中小企業の人材育成における通説は検証されない」と「中小企業の人材育成は経験マネジメントがカギ」です(詳しくは調査結果をご覧ください)。また、中小企業の人材育成の在り方について「上位者が下位者を育成し、下位者がさらに下位者を教えるように、『社長-右腕・中間管理職-若手・中堅社員』の三者が協力して育成の体制をつくることを必要としており、『一枚上の屋根瓦が一枚下の屋根瓦に重なる』ように構成される、いわば『屋根瓦式の人材育成』ということができる」と説明されました。
続いて、調査結果から明らかになった若手・中堅社員育成のキーワードである「経験ストック」、同じく管理職育成の「経験フロンティア」、右腕幹部育成の「経験ビジョン」について、それぞれより詳細にお伝えする分科会を開催しました。ご参加の皆さまには、①ご自身のご興味に合わせて分科会を選んでご出席いただき、②分科会終了後に再度全体で集まって分科会での各自の気づきを持ち寄っていただく、というジグソーメソッドを体感していただきました。
それぞれの分科会では、動画を用いて、経験マネジメントの各シーンを具体的にイメージしていただきながら、調査結果が自社の人材育成にどう関係しているのか、また明日からどう活かしていくのかを確認・議論していただきました。
続く事例・対話セッションでは、KKDに頼らない人材育成を実践していらっしゃる事例を通して、明日からの取り組みのヒントを得ていただきました。
まずエイトレント株式会社(レンタル業)の人事ご担当者の坂井様、株式会社データープロセスサービス(IT業)の藤田社長・大西様にそれぞれご登壇いただき、自社の人材育成に対する取り組みをご紹介いただきました。レンタル業とIT業ということで事業内容の全く異なる2社ですが、両社とも「人材こそ顧客に提供する価値の源泉」と捉えていらっしゃる点は共通しており、人材育成を経営のコアに位置づけ、仕組みとして整えていらっしゃる点が印象的でした。
その後、中原先生と当社代表の眞﨑も加わって、取り組みにおける具体的な苦労話などを伺いました。調査結果から明らかになった「経験マネジメント」による人材育成を地で行っていらっしゃる3名のお話に、参加者の皆さまも納得の様子でした。
最後に、当社代表の眞﨑より「経験マネジメント」をぜひ自社に導入していただくよう呼びかけがあり、後日多くの企業のご担当者様より実際にお声掛けいただきました。中堅・中小企業の人材育成を科学し、科学に基づくサービスを皆さまに提供するため、人材育成イノベーションフォーラムは今後も続いてまいります。