設立15周年を記念した特別調査として、「ビジネスパーソンの
キャリアや学びに関する意識調査」と「組織・チームのあり方
の変化に関する意識調査」を実施しました。

ビジネスパーソンのキャリアや学びに関する 意識調査

ビジネスパーソンのキャリアや学びに関する 意識調査
コロナ禍による働くうえで重視することの変化とキャリアに 関する行動・意向

2021年11月15日

調査背景

2021年、ALL DIFFERENT株式会社は設立15周年を迎えました。この15年間の日本を振り返ると、"アベノミクス"と呼ばれる経済政策を背景として緩やかに経済が成長した一方、リーマン・ショックや東日本大震災など数々の危機的な状況を乗り越えてきました。ビジネスパーソンに目を向けると、周辺環境の著しい変化に絶えず対応することが求められてきたといえます。特に2020年には新型コロナウイルスによるパンデミックが発生。生活様式までもが大きく変化する中で、働き方にも急激な変化が訪れました。

ALL DIFFERENT株式会社では、これらの変化がビジネスパーソンに与えた影響を明らかにするため、15周年特別企画として「ビジネスパーソンのキャリアや学びに関する意識調査」と「組織・チームのあり方の変化に関する意識調査」を行いました。第1回の今回は「ビジネスパーソンのキャリアや学びに関する意識調査」に関してレポートします。

サマリー

調査結果の詳細

1. 3人に2人が重視することが変わった。「収入」よりも「リモートワーク」できるかどうかが大切に?

今回の調査は、働くことやキャリアに対する意識がコロナ禍前後でどう変わったのかを明らかにすべく、5,995人のビジネスパーソンにご協力いただき、2021年8月23日~10月15日にかけて実施しました。

まず、新型コロナウイルス感染症の拡大によって「働くうえで重視すること」に変化があったのかを見ていきます。本調査では、67.1%のビジネスパーソンが「変化があった(はい)」と回答(図1)。およそ3人に2人が重視することが「変化した」ことが明らかになりました。 図1


では実際、どのような変化があったのでしょうか。図1の設問で、変化があったと答えたビジネスパーソンに「コロナ禍前に重視していたもの」を尋ねたところ、49.1%が「収入」と回答(図2)。続いて「休日数や残業時間(38.2%)」「一緒に働く人(33.1%)」「会社の安定性(26.5%)」という結果になりました。

それに対し、コロナ禍の現在は「リモートワークの可否」を重視するビジネスパーソンが45.5%で最多に。コロナ禍前の7.0%から38.5ポイントの大幅増加となっています。一方、コロナ禍前に重視していた「休日数や残業時間」は14.0ポイント減の24.2%、「一緒に働く人」は10.7ポイント減の22.4%となりました。

また、コロナ禍前に最多だった「収入」は、コロナ禍の現在は44.2%となり、約5ポイントの減少にとどまりましたが、「収入」よりも「リモートワークの可否」を重視するビジネスパーソンの割合が高くなり、オフィスで働くのが"当たり前ではない"という考えが浸透してきたことを示す結果となりました。 図3

2. 意識の変化に年代差、20代以下はコロナ禍前後で大きく変動

「リモートワークの可否」を重視する傾向が強まった背景には、コロナ禍でリモートワークが急速に普及したことが関係していると考えられますが、こうした意識の変化に「年代による差」はあるのでしょうか。

まず20代以下を見てみると、「リモートワークの可否」を重視する割合はコロナ禍前がわずか5.7%だったのに対し、コロナ禍では45.6ポイントアップの51.3%に増加しています(図3)。一方、30代以上の伸び率は20代以下に比べて鈍く、特に50代以上では11.6%から41.8%へと、30.2ポイントの増加にとどまりました。総じてコロナ禍では「リモートワークの可否」を重視する人の割合が高いものの、年代が上がるにつれてコロナ禍前後の変動が少ない傾向が見えてきました。

さらに、コロナ禍前後で重視する人の割合が最も下がった「休日数や残業時間」についても、年代による差があるのかを調べてみました。

図3の青枠が示すように、コロナ禍前は20代以下の46.3%が「休日や残業時間」を重視していましたが、コロナ禍の現在は27.3%に減少。19.0ポイントも下がっています。対して30代は15.7ポイント減、40代は8.6ポイント減、50代以上になると7.9ポイントの減少にとどまり、「リモートワークの可否」と同様、年代が上がるにつれてコロナ禍前後の変動が少ない傾向にあることが明らかになりました。 図3


3. コロナ禍で何か新しいことを始めた人は多い?少ない?

ここまで、働くうえで重視することの変化を見てきました。次に、今後のキャリアプランに関する変化を見ていきます。

まず、コロナ禍で仕事・キャリアに関わる新しい取り組みを始めたビジネスパーソンがどのくらいいるのかを調査しました。その結果、「特に行ったことはない」が64.1%で最も多く、「キャリアプランの見直し」を始めた人が24.5%、「転職活動」を始めた人が12.1%と続きました(図4)。また、「副業」を始めた人はわずか4.1%にとどまりました。コロナ禍が何かを始めるきっかけとなったビジネスパーソンは、それほど多くはないようです。 図4

一方、今後のキャリアの意向を尋ねる質問には、27.6%が「さらにキャリアアップを目指したい」と回答(図5)。次いで「今の働き方を継続したい(26.0%)」「プライベートを重視したい(20.3%)」となったことから、多くのビジネスパーソンが変化対応の必要性を感じつつも、キャリアにおいては現状維持を選択、あるいは現時点では静観しているようです。 図5

4. 新しいことを「始めた人」「始めていない人」のキャリアの意向に違い

さらに、コロナ禍で「何かを始めた人*1」と「何も始めていない人*2」では、今後のキャリアの意向に違いがあるのかを比較しました。

その結果、「何かを始めた人」の36.2%が「さらにキャリアアップを目指したい」意向を示し、「何も始めていない人」の22.8%と比べて13.4ポイントも高いことがわかりました。逆に、「今の働き方を継続したい」と回答した割合は「何かを始めた人」の方が16.1ポイント低く、また、「プライベートを重視したい」には大きな差がなかったことから、仕事におけるキャリアアップの意向が「何かを始めた」という行動に表れたと考えることができそうです。

*1 何かを始めた人:図4において「キャリアプランの見直し」「転職活動」「副業」「その他」いずれかを選択した人
*2 何も始めていない人:図4において「特に行ったことはない」を選択した人 図6

また、「何かを始めた人」のうち、回答が多かった「キャリアプランの見直し」「転職活動」を選んだ人に着目。「キャリアプランの見直し(だけ)」を始めた人、「転職活動(だけ)」を始めた人、「両方」始めた人の3つに分類し、今後のキャリアに対する意向に違いがあるのかを調べました。

まず、全体の傾向と同じく、3つ全ての分類で「さらにキャリアアップを目指したい」が最多に(図7)。特に「キャリアプランの見直し(だけ)」を始めた人では39.1%の回答が集まり、他の分類と比べて割合が高くなっています。

一方、「転職活動(だけ)」を始めた人は、他の分類と比べて「プライベートを重視したい」との回答が多く、唯一4分の1を超える25.1%がその意向を示しました。また、「両方」始めた人の約20%が「全く違う仕事にチャレンジしたい(19.4%)」と回答するなど、「キャリアプランの見直しだけを始めた人」「転職活動だけを始めた人」「両方始めた人」のキャリアの意向に違いが見られました。 図7

考察

企業に求められることは、多様化が加速する働き方やキャリアに対する柔軟性

今回の調査で、「働くうえで重視すること」がビジネスパーソンの3人に2人の割合で変化していることが明らかになりました。その背景には、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、生活様式が大きく変化するとともに、多くの人が自分自身の働き方に改めて目を向けたことがあると言えます。

中でも、顕著だったのが20代以下の若いビジネスパーソンの意識変化。価値観の多様化とも相まって、「誰と働くか」よりも「どのように働くか」を重視している傾向が見受けられました。そうしたメンバーを抱える管理職は、今までの働き方を前提としたマネジメントでは対応できなくなる可能性もあるでしょう。"会社で仕事をするのが当たり前世代"が、"リモートワーク当たり前世代"をどうマネジメントしていくのかという、コロナ禍ならではの課題が浮き彫りになりました。

また、転職活動を始めた人の中には、仕事とプライベートのメリハリをつけやすい環境を目指して行動に移し始めた人、自身のキャリアプランを見直した結果、目指すキャリアを今の会社では実現できないと考え社外に目を向け始めた人もいるようです。

ここから言えることは2つ。まずは、キャリアアップを重視する社員とプライベートを大切にする社員など、それぞれの希望に応じて活躍できる環境を会社として整えること。そして社内で挑戦できる仕事についてしっかりと周知し、新しい仕事にチャレンジしたいと考える人に選択肢を提示してあげる。この2つを実践することで、会社の未来を左右する人材の定着と社員一人ひとりの活躍の実現に一歩近づくと言うことができそうです。

調査概要

調査対象者 当社が提供する研修(会場型・オンライン型)、オンライン講演の受講者
調査時期 2021年8月23日~2021年10月15日
サンプル数 5,995人
属性 (1)年代
20代 2,166人(36.1%)
30代 1,616人(27.0%)
40代 1,271人(21.2%)
50代以上 885人(14.8%)
不明 57人(1.0%)
(2)役職
一般社員クラス 4,166人(69.5%)
係長・主任クラス 1,328人(22.2%)
課長クラス 284人(4.7%)
部長クラス 96人(1.6%)
経営層・役員クラス 18人(0.3%)
その他(専門職・特別職など) 77人(1.3%)
不明 26人(0.4%)
(3)従業員数
100人以下 1,381人(23.0%)
101人~300人 2,452人(40.9%)
301人~500人 795人(13.3%)
501人~1,000人 673人(11.2%)
1,001人以上 484人(8.1%)
わからない 170人(2.8%)
不明 40人(0.7%)
(4)業種
情報通信業 1,577人(26.3%)
製造業 785人(13.1%)
卸売業,小売業 594人(9.9%)
サービス業(他に分類されないもの) 675人(11.3%)
建設業 364人(6.1%)
学術研究,専門・技術サービス業 319人(5.3%)
不動産業,物品賃貸業 256人(4.3%)
その他、不明 1,425人(23.8%)

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