「今の会社で働き続けたい」新入社員が5年ぶりに上昇
3,128名への調査をもとに、2020年度の新入社員の傾向を分析しました
2020年5月15日
新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策として、在宅勤務やローテーション勤務、時差通勤といった取り組みが推奨され、多くの企業で働き方に大きな変化が起きています。こうした事態が新入社員の意識にどのように影響しているのか。2020年度に入社した新入社員3,128名を対象に意識調査を実施し、過去の調査結果との比較分析を行いました。
新型コロナウイルスの感染拡大が影響か、勤続意向が5年ぶりに上昇
当社は2014年度から毎年、新入社員を対象にキャリアに対する意識調査を実施し、勤続意向やキャリアの志向などについて、年度ごとの傾向をまとめています。
今年度の回答を集計した結果、「できれば今の会社で働き続けたい」と答えた新入社員が59.1%となり、5年ぶりに上昇しました(図1)。2016年度以降、新入社員の勤続意向は年々低下し、昨年は全体の半数ほどまで減少していましたが、今年は一転、6割近くまで上昇しました。
これには、新型コロナウイルスの感染拡大による先行きへの不安が影響している可能性があります。実際に、当社が実施した新入社員研修の参加者からは、「社会人生活が在宅勤務からスタートし、社会人らしさを感じられず不安」「新入社員研修後から自宅待機となり、いつまで続くか不安」といった声が多数上がっています。こうした不安の裏返しから、今の会社で働き続けたいと思う新入社員の割合が大きく増加したのではないかと考えられます。
「いざというとき」のための専門性? それとも汎用性?
このような新入社員を取り巻く「不安」は、勤続意向だけでなく、別の面にも現れているようです。
将来会社で担いたい役割について、毎年3割程度の新入社員が「専門性を極め、プロフェッショナルとしての道を進みたい(専門家)」と答えています。今年は31.1%の新入社員が「プロフェッショナル」を目指したいと回答しましたが、その理由に大きな変化が見られました。
この31.1%の新入社員に、「なぜプロフェッショナルになりたいと思ったか」を聞いたところ、「いざというときに専門性を活かして仕事をしていきたいから」が54.6%となり、調査開始以来、最も高い割合となりました(図2-1)。感染症拡大で経済活動が大きく制約される中、「もしものときに備えて専門性を磨いておきたい」と志向する新入社員が増えたといえるのではないでしょうか。
また、「今後どのような仕事をしていきたいか」という質問に対しては、昨年同様、「楽しくてやりがいのある仕事(73.1%)」「自身の成長につながる仕事(57.6%)」に回答が集まりましたが、伸び率で見ると、「広範囲なスキル・知識が求められる仕事(21.2%)」が昨年の約2倍に(図2-2)。「いざというとき」のために専門性を高めておきたいと考えるのと同様、広範囲なスキル・知識を身につけることで環境の変化に対応できるようにしておきたいという意識が表れたと考えられます。
今年の新入社員は「相談できる場」を求めている
では、「楽しくてやりがいのある仕事」「自身の成長につながる仕事」、そして「広範囲なスキル・知識が求められる仕事」もしたい新入社員たちは、会社にどのようなサポートを望んでいるのでしょうか。
「キャリア形成支援について会社に期待することは何か」という質問(図3-1)では、「上司に相談できる機会をつくってほしい」が48.8%と昨年から10ポイント近く伸び、過去最高を記録しました。また「上司以外の社員に相談できる機会をつくってほしい」も29.7%と、調査開始以来最も高い割合となりました。在宅勤務や自宅待機によって対面でのコミュニケーションを取る機会が少なく、今後に対する不安も抱えていることから、上司や先輩社員に相談できる場を求める新入社員が増えたのではないかと推測できます。
また、どのような状況なら今の会社で働き続けようと思うか聞いたところ、「職場の人間関係が良い(66.6%)」状況なら働き続けたいと答えた新入社員が最多に(図3-2)。在宅勤務や自宅待機、プライベートでは外出の自粛など、職場に限らず人と接する機会が減っていることもあり、人間関係を重視する傾向が表れたのかもしれません。
新入社員の不安を払拭する取り組みを
今回の調査から、今年度の新入社員の勤続意向は例年と比べて高く、また、万が一の場合に備えて専門性を高めておきたいと考える新入社員の割合が増加していることが明らかとなりました。また、会社に対し、上司や他の社員に相談する機会をつくってほしいと望む新入社員の割合も、これまでと比べて高くなっています。
一方、就職活動に関する質問については、新型コロナウイルスの感染拡大が起きる前に就職活動を行っていたためか、過去の結果と大きな変化は見られませんでした(図4-1、図4-2)。
これらの調査結果から、感染症拡大に伴う社会的、経済的環境の激変が、新入社員の意識に変化をもたらした可能性が高いといえるのではないでしょうか。
新入社員の意識変化には、入社直後の在宅勤務や自宅待機のほか、景気の急速な悪化などによる様々な不安が大きく影響していると考えられます。先行きが見通せず、新入社員の不安は今後ますます大きくなるかもしれません。新入社員の不安を払拭するような取り組みができているか、今一度振り返り、今後の教育・育成計画に取り込んでみてください。
調査概要 2020年度新入社員のキャリアに対する意識調査(速報値)
調査対象者 | 当社が提供する新入社員向け研修の受講者(会場型・オンライン型) | |
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調査時期 | 2020年4月2日~2020年4月22日 | |
調査方法 | 自記式またはWEBでのアンケート調査 | |
サンプル数 | 3,128名 | |
属性 |
(1)性別
①男性:57.9%(1,811名) ②女性:42.0%(1,313名) ③不明:0.1%(4名) |
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(2)所属企業の従業員数規模
①1名~50名:8.1%(252名) ②51名~100名:18.4%(574名) ③101名~300名:36.0%(1,127名) ④301名以上:31.2%(977名) ⑤不明:6.3%(198名) |
*各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としています *本調査を引用される際は【ALL DIFFERENT株式会社「新入社員の意識調査」】と明記ください
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