内定辞退防止にも有効⁉ 1,121名の本音から、内定者フォローの成功ポイントを考察しました
2020年5月29日
労働者人口の減少を受け、中小企業を中心に新卒採用が厳しさを増す昨今。せっかく新卒社員を確保したものの、内定を辞退されてしまった、そんな声をよく聞きます。内定辞退を防ぐため、企業にはどのような行動が求められるのでしょうか。今回は、2020年度入社の内定者1,121名(調査実施時)の“本音”をもとに、本当に必要な、そして有効な内定者フォローとは何かを考えていきます。
9割以上の内定者がこれからの仕事に高い意気込みを持っている
新年度を迎え、新入社員研修やOJT研修など、新入社員の早期立ち上がりをサポートするための様々な取り組みが行われています。特に感染症の拡大防止に向けた対策が求められる今、集合研修からオンラインの動画研修に切り替えるなどの措置を取っている企業も多いと思います。
新入社員自身も、内定時代からコツコツと勉強したり、内定者同士で情報交換したりと、高い意気込みや期待を持って学習に取り組んできたでしょう。
では実際に、今年度の新入社員は、内定後の学生時代にどの程度の意気込みを持っていたのでしょうか。当社では、2019年10月~11月にかけて2020年入社の内定者1,121名を対象に調査を実施。仕事への意気込みや不安、会社へ求めるサポートなど、内定者の"本音"を探りました。
その中で、仕事への意気込みをパーセンテージで表してもらったところ、一番多かった回答は「80%」。29.0%の方がその意向を示しました(図1)。次いで「100%」が28.4%、さらに「90%」が20.0%、「70%」が14.7%と続きます。
対して「60%以下」と回答した割合はわずか7.9%。何かしらの不安や懸念を抱えてはいるものの、「70%以上」と回答した割合が92.1%に達したことから、内定段階の学生たちの多くが仕事に対して高い意気込みを持っていることがわかりました。
内定者が一番不安に思っているのは「自分の能力」 不安や懸念の6割以上が「仕事についていけるか」
では、仕事への意気込みが100%にならない原因はどこにあるのでしょうか。前の質問で、これからの仕事への意気込みが「100%ではない」と回答した方に、その理由を尋ねました(図2)。
最も多かった回答は、「自分の能力で仕事についていけるか不安があるから」で66.5%、次に「生活や環境の変化に不安があるから」で49.1%となりました。対して、同じ"不安"でも「職場メンバーとうまくやっていけるか不安があるから」は30.1%となり、人間関係よりも自身の能力や環境の変化に対する不安が、仕事への意気込みを下げる一因となっていることがうかがえます。
一方、「自分の就職活動に納得していないから」と回答した割合はわずか1.9%にとどまり、就職活動への不完全燃焼が仕事への意気込みを下げる理由になることはほとんどないこともわかりました。
入社前に最も望んでいるのは「学習機会」 半数以上が「社会人の基礎を教えてほしい」
上述したように、自分の能力や環境の変化に不安を抱える内定者が多い中、その不安を払拭するには、企業としてどのようなサポートを行っていく必要があるのでしょうか。
内定期間中に受けたいサポートに関する質問では、「マナーや仕事の進め方など、社会人としての基礎を教えてほしい」が52.3%で最多となり、次いで「業界の専門知識や専門スキルを教えてほしい」が44.0%となりました(図3)。この結果から、基本的な知識や最低限のスキルを身につけたうえで入社を迎えたい、仕事に臨みたいという意向が感じられます。
一方、「先輩社員との人間関係を築く機会がほしい(35.5%)」「内定者との人間関係を築く機会がほしい(25.1%)」という、人間関係構築の機会を望む声は3割前後に。内定者の多くが、人間関係を構築する機会よりも、知識やスキルの習得機会を必要としている実態が見えてきました。
また、「会社の組織体制がどうなっているか教えてほしい」「会社のキーパーソンについて教えてほしい」はそれぞれ14.4%、6.4%となり、社会人にとって仕事をスムーズに進めるうえで欠かせない組織や人事の情報について、内定段階の学生たちはそれほど気に留めていない様子がうかがえます。
まとめ
今回の調査から、2020年度入社の新入社員は、内定段階から仕事に対して高い意気込みを持っているものの、自分の能力に不安を抱え、その不安を払拭するためか、事前の知識インプットを求めていることが明らかになりました。これは、今の若い世代の特徴でもある「経験前学習」の考え方、つまり「何かをするなら失敗したくない、先に答えを知りたい」という習慣からきていると考えることができます。
また、デジタルネイティブとも呼ばれるこの世代は、スマートフォンやタブレットを持ち歩くことが習慣になっており、ビジネスマナーや仕事の進め方など、社会人としての基礎知識をいつでも調べることができます。しかし、内定段階の学生にとって、多くの情報から必要な情報を取捨選択するのは難しいものです。入社という大切な場面において、より確実な情報を得たいという気持ちが、「社会人としての基礎を教えてほしい」という回答にあらわれたと考えられます。
このような傾向を踏まえると、内定者の学習意欲の高さや不安解消に応える「知識やスキルの習得機会」を与えることが、今の時代の内定者フォローに欠かせない要素だと言うことができそうです。
実際に入社してきた新入社員たちを見て、皆さまはどのように感じていますでしょうか。内定期間中の知識インプットを通じ、自信がついた社員もいれば、まだまだ勉強したい、そんな意気込みにあふれる社員も多いのではないでしょうか。今回の調査結果を、今後の内定者フォローにお役立ていただければ幸いです。
調査概要
調査対象者 | 当社の提供する内定者研修の受講者 | |
---|---|---|
調査時期 | 2019年10月15日~2019年11月27日 | |
調査方法 | 自記式のアンケート調査 | |
サンプル数 | 1,121名 | |
属性 | (1)性別 ①男性:51.9%(582名) ②女性:45.6%(512名) ③不明:2.4%(27名) | |
(2)所属企業の従業員数規模
①1名~100名:29.1%(327名) ②101名~300名:48.3%(542名) ③301名以上:15.4%(173名) ④不明:7.0%(79名) |
*本調査を引用される際は【ALL DIFFERENT株式会社「内定者の意識調査」】と明記ください
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